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パッケージ導入時の要件定義に必要な「Fit&Gap」とは?実施方法やポイントを解説

本記事では、パッケージの導入を担当することになった方へ向けて、導入の成否に大きく関わる「Fit&Gap」について解説します。
Fit&Gapの実施方法が分からない、あるいはこの言葉自体を聞いたことがないという方もいると思います。
一方で、Fit&Gapを実施しなければ、自社にとって最適なパッケージを選択できず、また、選んだパッケージの機能を最大限活用することもできず、導入失敗のリスクが高まります。
Fit&Gapの意味から実施方法までを抑えることで、パッケージ導入の成功に大きく近づくことができます。

1.Fit&Gapとは

Fit&Gap(フィットアンドギャップ)とは、「パッケージの機能」と「パッケージに求める機能」が、どれだけ適合しているかを分析することです。

パッケージはすでに標準的な機能を備えていますが、自社の求めている機能に100%適合するケースはほとんど存在しないと考えられます。

そのため、適合している(Fit)、あるいは適合していない事項(Gap)を洗い出した上で、適合していない(Gap)と判断した項目について対応方針を検討することで、自社にとって最適なパッケージ製品やパッケージで利用する機能を決定していきます。

2.Fit&Gapは3段階に分けて行う

2-1 「3段階Fit&Gap」とは?


IT調達ナビを運営しているGPTechでは、パッケージ導入のプロセス全体において実施するFit&Gapについて、以下の3段階に分けて考えています。

(1) 簡易Fit&Gap
(2) 標準Fit&Gap
(3) 詳細Fit&Gap

Fit&Gapを3段階に分けている理由は、候補となりうる「全ての」パッケージに対し、事細かにFit&Gapを実施するということは、担当者の負担が大きく現実的ではないためです。

自社が求める機能との適合度が高いパッケージを段階的に絞り込み、適合度が高い候補にのみ、より詳細なFit&Gapを実施することで、担当者の負担を抑えつつ、制度の高い分析を実施することができます。

なお、一般的に「Fit&Gap」と呼ばれる際には、3段階のうち「(3)詳細Fit&Gap」を指すことが多いです。

2-2 「3段階Fit&Gap」の概要

3段階のFit&Gapについて、目的、実施時期、実施内容を説明します。

(1)簡易Fit&Gap
目的:深掘り検討に値するパッケージをピックアップし、導入候補となるパッケージを絞り込むため。
実施時期:候補となるパッケージのうち、明らかに自社の要求を満たさないものを除外した後
実施内容RFI(情報提供依頼)などによる情報収集を行う。30分~1時間程度の簡単なデモを実施する。

(2)標準Fit&Gap
目的:パッケージを提供する候補会社から精緻な見積もりを取得し、契約条件を固めるため。
実施時期:簡易Fit&Gap実施後、絞り込んだ候補会社にRFP(提案依頼書)を発出する前。(契約する会社を具体的に決定する前の段階)
実施内容:候補会社に、パッケージが自社の要求に適合するかを文書上で整理してもらう。また、対象業務ごとに、2時間程度のデモを行う。

(3)詳細Fit&Gap
目的:パッケージでの実現内容を決定するため。
実施時期:パッケージを提供する会社と契約後、パッケージ会社との間で要件定義を実施するとき。
実施内容:機能グループごとに、2時間~半日のデモ を行う。

 

3.詳細Fit&Gapの詳細説明

ここからは、詳細Fit&Gapについて、詳しく説明します。

詳細Fit&Gapは、パッケージ会社決定後に行う「要件定義」の段階で、自社にとって最適なパッケージの実現内容(どの機能をどのように利用するのかということ)を決定するために実施します。

冒頭で説明したように、パッケージにはすでに標準的な機能が備わっています。
その標準機能が、自社の求めている機能にどれだけ適合(Fit)しているか、適合していないか(Gap)を把握することで、パッケージの実現内容を決めていきます。

3-1 詳細Fit&Gapの実施方法

具体的な実施方法としては、以下の3点です。

(1)パッケージを導入する対象業務に精通している業務部門の担当者に、パッケージのトレーニングを受けてもらう
(2)トレーニングを受けた担当者に、機能の適合度を判断してもらう
(3)適合していない事項(Gap)への対応策を検討する

詳細Fit&Gapの流れを説明している図

以下でそれぞれ詳しく説明します。

(1)業務部門の担当者に、パッケージのトレーニングを受けてもらう

詳細Fit&Gapで、パッケージの機能と自社が求める機能がどれだけ適合しているかを図るためには、業務のことをちゃんと理解している担当者が、実際にパッケージを利用して業務が遂行できそうかを判断する必要があります。

具体的に実施することとしては、対象業務のことを深く理解している業務部門の担当者に、パッケージのトレーニングを受けた上で、パッケージの機能で自社の業務ができるかどうかを判断します。
(このトレーニングは、一般的にパッケージ会社が提供している製品のレクチャーを受けることを指します。実施方法は対面でのレクチャーやe-ラーニングなどがあります。)

従来のFit&Gapでは、パッケージ会社側が対象業務の内容を理解して、機能が適合するかを整理するのが一般的でした。しかし、発注側がパッケージ会社側に要求内容を正しく説明できない、あるいはパッケージ会社側が業務を正しく理解できないことが発生していました。

そのため、機能の適合度を正しく判断できないままにパッケージを導入してしまうというリスクがありました。
発注側で業務のことを深く理解している担当者が詳細Fit&Gapを実施するで、従来発生していた問題を回避することができます。
ただし、ここでFit&Gapを行う担当者には、機能の適合性を判断できるだけの業務経験、判断力が必要です。

(2)トレーニングを受けた担当者に、機能の適合度を判断してもらう

詳細Fit&Gapを実施する業務部門の担当者が、パッケージのトレーニングを実施した後、パッケージの機能、またはパッケージを利用した場合の標準的な業務フローを確認します。パッケージの機能ごとに、自社が求める機能との適合度を判断していきます。

この判断をする上で重要となるのが、「Fit to Standard(フィット トゥ スタンダード)」という考え方です。

「Fit to Standard」とは、パッケージの標準機能に合わせて、自社の業務を見直していくという考え方です。
つまり、「自社の業務に合わせてパッケージに求める機能を決める」のではなく、「パッケージの標準機能に合わせて自社の業務ができるかどうか」、という観点で、機能の適合度を判断するということです。

この考え方を重視することで、パッケージに別途開発をして機能を追加する「アドオン開発」を必要最小限にし、パッケージ導入までにかかる時間や金銭的コストを抑えることができます。

業務の性質や業務を実施する現場の体制・スキル、予算や期間などを考慮した上で、「Fit to Standard」の考え方を採用するかどうかを検討します。

特に、パッケージ導入を機に「業務効率化」を実現したいという目的を掲げている場合、Fit to Standardの考え方で検討することで、複雑化した業務をシンプルに効率化させることが期待できます。

ただし、Fit&GapやFit to Standardの考え方で機能の適合度を判断しても、どうしてもパッケージに合わせられない部分が出てきます。パッケージに合わせられない部分を「Gap事項」として洗い出します。

(3)適合していない事項(Gap)への対応策を検討する

詳細Fit&Gapの結果、適合していない(Gap)と判断した事項ごとに、対応方針を検討します。
対応方針としては、以下の3種類のいずれかから選択することになります。

  • 運用対処:システムで実現できない部分を、人手で対応する
  • BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング):業務の進め方や方法自体をパッケージの標準機能に合わせて変えていく
  • アドオン開発:パッケージの標準機能に追加で機能を追加する

このうち、「運用対処」「BPR」を選択するGap事項については、具体的に業務設計を進めていく担当者やスケジュールを検討していきます。

また、「アドオン開発」を選択するGap事項については、開発する場合の規模感、費用感をパッケージ会社に確認した上で、アドオン開発を実施すべきかどうかを検討していきます。
実際に開発をする部分については、パッケージ会社側との要件定義を実施していきます。

以上、(1)~(3)で、パッケージの標準機能に対して自社業務との適合度を判断し、Gap事項への対応方針を検討することで、「パッケージでの実現内容を決定する」という詳細Fit&Gapの目的を達成できます。

4.まとめ

本記事では、パッケージを導入する際に必ず実施するべき「Fit&Gap」を3段階に分解し、その中の「詳細Fit&Gap」について、詳しく説明しました。まず、Fit&Gap全体としては、以下の3段階を実施します。

  • 数あるパッケージの中から、深掘りに値するパッケージ候補を絞り込むための「簡易Fit&Gap」
  • 契約の前段階で、精緻な見積もりを取得し、契約条件を固めるための「標準Fit&Gap」
  • 契約後の要件定義段階で、パッケージでの実現内容を決定するための「詳細Fit&Gap」

そして「詳細Fit&Gap」は、以下の順で実施します。

  • 業務に精通した担当者にパッケージのトレーニングを実施してもらう
  • トレーニングを受けた担当者に、機能の適合度を判断してもらう
  • 適合していない事項(Gap)への対応策を検討する

また、詳細Fit&Gapでは、「Fit to Standard」の考え方で、パッケージの標準機能に合わせて自社の業務ができるかどうかを確認することが重要になります。

以上のFit&Gapを経ることで、自社にとって最適なパッケージを導入し、パッケージのメリットを最大限に享受することができるようになります。
ぜひ3段階のFit&Gapや、要件定義時の詳細Fit&Gapの進め方やポイントを意識して、プロジェクトを進めてみてください。

この記事の編集者

武田 祥太郎

武田 祥太郎

大学時代法学部で労働基準法の研究を進める中で日本の労働生産に課題を感じ、ITによる企業体質の健全化を目指して(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 民間企業のITガバナンス、マネジメント支援業務に従事し、同社のナレッジ活用知見を活かしてIT調達ナビで記事の展開にも携わる。

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