システム導入/刷新に向けて社内でプロジェクトを立ち上げたいときにやるべきこと
目次
この記事で理解できること
本記事では、新システムの導入や既存システムの刷新を担当することになった方、また、会社として具体的な話は進んでいないが個人レベルで検討に着手したいと考えている方へ向けて、まずは何から始めていけばよいのかを解説いたします。
日々の業務の中でシステムを操作して利用することはあったとしても、新しいシステムを使い始める前段階の業務を経験したことのある方はほとんどいないのではないでしょうか。
システムの規模にもよりますが、新システム導入時の初期費用は数千万円から数億円かかることもあり、システムを利用する現場の業務担当者や情報システム部の担当者、経営層等の多くのステークホルダーが存在します。
また、日々の通常業務に加えて、システムの導入に向けて新たに別のタスクもこなしていく必要があり、最初にシステム導入プロジェクトの「目的」や「体制」を踏まえた方針をすり合わせ、全員で同じ方向性を向く、ということが非常に重要になります。
まずは、全員で同じ目標を目指して動き出すために、どのようにプロジェクトを立ち上げればよいのか解説します。
システム発注の全体の流れを知りたい方は、こちらからご覧ください。
システム発注プロセスの中での位置づけ
本記事では、システム発注プロセスにおいて、最初の「①プロジェクト立ち上げ」を解説します。
プロジェクトを立ち上げる
このフェーズでは、以下のような流れで進めていきます。
それぞれ、各実施内容において、どのようなことを検討・協議するのか、どのような資料を作成するのか、詳しく解説していきます。
プロジェクト情報を整理する
まずはシステム導入プロジェクトを立ち上げるために必要な情報を収集し、整理しましょう。必要な情報としては、以下のような項目があげられます。
- 背景 :手作業でミスが多発している、既存システムの利用期限が迫っている、事業が拡大し現在のシステムでは対応しきれない、といったような、システムの導入/刷新を検討した背景を整理します。
- 目的・目標:背景を踏まえ、どのような課題を解決することをプロジェクトの目的とするのか、プロジェクトでどのような目標を達成したいのか、について整理します。
- 体制:プロジェクトオーナー、プロジェクトリーダー、各関係者との窓口を担う事務局メンバー、新システムを利用する業務ユーザー等を誰にするのかを検討します。
- 検討範囲:業務の中でもどの部分をシステム化したいのか、このプロジェクトでの検討範囲を整理します。
- 開発方式:システムの開発方式として大きく2つあり、「スクラッチ開発」と「パッケージ導入」に分かれます。(スクラッチ開発は、システムに求める機能をすべて一から検討して開発をする方式、パッケージ導入は、すでにシステム開発会社で開発されているパッケージ製品を導入する方式です。)
- 要検討事項:システムを導入することを見据えた際に、既に現時点から懸念される事項や、検討しなければいけない事項について洗い出しをします。
現状調査の計画を立てる
次に、現状の業務やシステムを調査するための計画を立てましょう。
業務担当者は自身の業務や既存システムの操作に習熟していますが、プロジェクトメンバーになる情報システム部の担当者はそうではないことが多いと想定されます。また、人によっても業務やシステムへの理解が異なることがあるため、プロジェクトメンバー全員で現状業務・システムの課題を認識するためにも、調査し可視化することが必須です。
計画を立てる際には、業務フロー、既存システムの機能一覧・要件定義書・設計書といったドキュメントがあるかどうかを、業務担当者と確認します。もしドキュメントがあれば、各ドキュメントの品質や更新状況について中身を確認し、現状の業務やシステムを正確に把握できるだけの情報がそろっているかを判断します。
これらの確認を踏まえ、現状の業務を把握するためにどのように調査を進めていけばよいのかを検討し、調査にかかる工数も算出しておきます。
発注先のシステム開発会社や製品の調査方針を検討する
「プロジェクトの情報を整理する」の中で「検討範囲」を整理する事項としてあげましたが、検討範囲を踏まえて開発方式(パッケージ導入/スクラッチ開発)について考えます。
パッケージ導入とは、既に製品化されたパッケージシステムを利用すること、スクラッチ開発とは、一からシステムを設計・開発することです。
どちらの開発方式を選択するかについて考え方は様々ありますが、自社の組織や事業としての強みになっており独自性の高い領域にシステム導入を検討しているのであればスクラッチ開発、法令に基づく会計業務等、自社としての独自性が特にない領域であればパッケージ導入を選択します。
もし開発方式として「パッケージ導入」の方針で検討を進める場合、今回の検討範囲に該当しそうなパッケージ製品を、事前にインターネットで調査しておくことをおすすめします。プロジェクトを立ち上げた後にパッケージの調査を詳細に進めていくにあたり、調査にかかりそうな想定工数を見積もっておくと、プロジェクトの計画が立てやすくなります。
スケジュール・体制を検討しプロジェクト実行計画を作る
次は、プロジェクトの予算や体制を確保するために、プロジェクトの実行計画(スケジュールや体制など)を検討しましょう。
ここでの実行計画は、プロジェクトの立ち上げから、発注先のシステム開発会社を決めるまで(=「システム導入/刷新計画」を策定するまで)のスケジュールや推進体制を検討します。
実際の現状業務・システムの調査を進め、候補となりそうなシステム開発会社やパッケージ製品の調査を進めていく中で、実は新システムを導入せずとも業務を改善すれば課題は解決する、想定していたより費用がかかってしまうためシステム刷新のタイミングを見送る、といった判断になる可能性もあります。
そのため、最初から具体的なシステム導入/刷新計画を立てるのではなく、まずは現状調査やシステムへ求める事項の検討、パッケージ製品やシステム開発会社の調査をする、というタスクの実行計画を立てましょう。
スケジュールを検討するにあたり、必要な工程はこちらの記事にある「2.現状調査・要求検討」「3.システム導入/刷新計画策定」をご参照ください。
検討範囲の規模にもよりますが、約3か月程度の時間は必要なケースが多いです。
また、プロジェクトの推進体制(メンバーや役割)も検討しましょう。
構成としては、プロジェクトオーナー(プロジェクトの最終意思決定者)、プロジェクトリーダー、業務担当、システム担当(情報システム部の社員が担当することが多い)などが考えられます。
特に、「業務担当」については、システムを導入する範囲の業務について習熟しており、最終的にシステムを一番利用することになる人をプロジェクトメンバーとして参加してもらうことが重要です。
往々にして、業務担当の方は日々の業務で忙しいことが多く、プロジェクトに時間を割くことが難しい場合があります。そのため、場合によっては、プロジェクトリーダーや業務担当の上長が、業務担当がプロジェクトの業務に携わることができるように仕事量を調整することも必要です。
また、業務担当の方だけではなく、システム担当として参画する方も、日々の業務で忙しく、また、システムの運用は慣れているがシステムの導入/刷新はあまり経験していないという方も少なくありません。そのため、必要に応じて、現状業務・システムや、発注先候補となりそうなシステム開発会社やパッケージ製品の調査や検討を支援してくれる、社外のコンサルタントを利用することも考えてみてください。
プロジェクトの体制の作り方やメンバーの選び方について、より具体的に知りたい方は以下の記事をぜひご覧ください。
体制や予算を確保する
プロジェクトの実行計画ができあがれば、体制や予算を自社の手続きに従って確保します。
前章で言及したように、プロジェクトの業務は日々実施している業務とは別に時間を捻出することになるため、プロジェクトに参画するメンバーの工数を確保しておくことが必要です。
また、社外のコンサルタントを利用する場合は、コンサルタントから提案や見積もりを受領し、予算も確保しましょう。
プロジェクトが立ち上がった後は
無事に体制や予算を確保することができ、プロジェクトを立ち上げることができれば、次は現状(As-Is)の業務・システムの調査や、課題分析、システム導入後の理想(To-Be)の業務・システムの検討を進めていきます。
プロジェクト立ち上げ後に実施する内容や意識したいポイントについて、以下の記事で解説しています。ぜひ、続けてお読みください。
IT調達ナビの運営会社である株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジー(GPTech)は、システム導入における、「システム発注側」の支援に特化したコンサルティングファームです。
プロジェクトの立ち上げ段階において、プロジェクト実行計画を作成するところから提案・支援することも可能です。
システムの開発方式をどのように検討すればよいのか分からない、プロジェクトのスケジュールや体制をどのように組めばよいのか分からない、といったご相談も受け付けます。ぜひ一度弊社までご相談ください。
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