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ERP選定における重要な考え方やポイント、製品比較の評価観点を解説!

「ERPを導入する方向性は固まったけれども、たくさんあるERPパッケージの中からどれを選定すればいいのかがわからない」という相談を受けることがあります。そんな時には、まず、ふたつのポイントがあることをお伝えしています。

ひとつは「選定プロセス」、もうひとつは「選定の評価基準設定」です。

「選定プロセス」ついては、当社の「ERP系業務パッケージシステムの調達支援サービス」のページで詳しく説明していますが、簡単にまとめると「IT投資の目的を言語化し社内共有を図った上で、業務部門の主体的な協力を得ながら、数段階のFit&Gapと製品選定を進めていく」ということになります。

ERPとはなにか、また導入するメリットや導入するプロセスを知りたい方は、以下の記事を参照ください。

 

この記事では、もう一方の「選定の評価基準設定」を説明します。

1.ERP選定の重要な考え方

ERP選定時には、ポイントをおさえて候補製品を評価し、自社に最適なERPを選定することになります。
ここで重要な考え方となるのが、コンサルタントやITベンダーなどの外部からのサポートを受けながらも、社内の業務部門、IT部門が主体的に行うということです。当たり前のようですが、とても重要です。

この考え方を外すと、ERP選定の目的意識が薄れ、間違った選定をしてしまう可能性がありますし、導入プロジェクトも運用フェーズも「やらされ感」が漂うモチベーション不足の状況となってしまいます。

また、販売ランキング上位のERPが自社に相応しいかというと、そうとも限りません。また、同業他社が導入しているERPの情報はとても有益なものですので、知っておくに越したことはありませんが、それであっても、自社にフィットするかどうかは、やはり、自分たちで主体的に判断して選定しなければ失敗につながってしまいます。

 

2.ERP選定での重要なポイント

日本で利用可能なERPパッケージは100以上と言われています。多数のERPの中から、自社に最適なERPを選定するというのは大変な作業ですが、必須の選定ポイントとしては「導入目的との合致度」「複数製品の導入要否」が挙げられます。

そして、それらを細分化すると「必要な機能の充足度」「アドオンの必要性」「コスト」「システムのインフラ形態」「運用の容易性」「保守の容易性」「ベンダーのサポートレベル(導入、運用、保守)」「セキュリティ」「同業他社の導入実績」などの比較表の細目となります。

本記事では、重要な製品比較評価の観点として、「導入目的との合致度」「複数製品の導入可否」の2点について、留意すべきポイントを解説いたします。

 

2.1 ERP導入目的との合致度

製品比較評価の観点の1点目として、「導入目的との合致度」を解説します。

ERPを選定する際には、「なぜERPを入れるのか」「ERPを入れて何を改善したいのか」といった目的を明確に定義して、それぞれのERP候補が目的に合致するのかを検討することが重要です。
この観点が考慮されていないと、ERPを導入すること自体が目的化してしまう、あるいは導入後に十分な効果が出ないなどの問題が発生します。

ERP導入時の基本的な考え方として、業務内容をERPの標準機能に合わせる「Fit to Standard」という考え方があります。ERP導入目的を達成するには、既存業務を見直し、ERPを活用することを前提とした業務に組み替える必要があります。なぜなら、ERPの機能を既存業務に全て合わせることは現実的ではなく、そもそも根本的な課題が既存業務にあれば業務を見直さなければ課題が解決しないためです。

このとき、新しい業務を組み立てるのは、業務に精通した業務部門になります。そのため、ERPを導入する際には、業務部門に業務を組み立て直す志と覚悟が必要です。(裏返せば、業務部門の覚悟がない段階ではERP導入を進めるべきではないともいえます)

一方で、「Fit to Standard」とはならずに、多少なりともアドオン開発が発生する見込がある場合、「標準機能が自社に適合しているか」だけを重視して製品選定を行ってしまうと、実は開発の拡張性が乏しく、思うようなアドオン開発ができないといったことも起こり得ます。

選定の際には、ERPの導入目的に立ち返り、合致していることを確認することで、導入後に効果を発揮することができます。

 

2.2  複数製品の導入可否

製品比較評価の観点の2点目として、「導入目的を満たすシステム機能を、1つの製品でカバーするのか、複数製品でカバーするのか」という観点を考慮する必要があります。
これは、それぞれのメリットデメリット、社内IT体制を勘案した上で自社に適した選択を採る必要があります。

メリット/デメリット

・ERPの機能を1つの製品でカバーする場合、以下のようなメリット/デメリットがあります。

メリット:複数ERPの連携などが発生しないため、考慮事項が少ない、1つの開発会社に任せられる

デメリット:高コストな製品になりやすい、個別領域ごとに見ると機能が不足する可能性がある

・ERPの機能を複数製品でカバーする場合、以下のようなメリット/デメリットがあります。

メリット:製品価格が安くなりやすい、個別領域ごとの機能適合度の高い製品を選べる、領域ごとに製品刷新ができる柔軟なシステム構成を実現できる

デメリット:複数製品を連携させる難易度が高い、複数社の管理負荷が高い

社内IT体制

複数製品の導入のデメリットをカバーできるだけの社内体制があるかどうか、というところが重要な判断指標になります。自社内に、複数製品を連携するIT共通基盤が整備されている、あるいはIT共通基盤を整備するIT部門があれば、複数製品を組み合わせるシステム構成のメリットを追求することができます。しかし、そうでない場合は、複数製品を適切に連携させることを自社内で行うことは非常に困難であるため、1つの統合ERPパッケージでカバーするシステム構成を選ぶ方が無難です。

IT共通基盤の整備なしに複数の製品を入れても、それぞれの製品でデータが独立してしまい、二重入力の手間が発生したり、運用の複雑化による負荷の増加が発生したりするなどの問題が発生します。

そのため上記を勘案して、自社が複数製品によるシステム構成を追求してよいか否かを検討することが重要です。

IT共通基盤の考え方については、以下の記事を参照ください。

 

 

3.最後に

ERPシステムの選定のために「ERP導入目的との合致度」「複数製品の導入可否」を勘案すること必要性を説明させていただきました。各企業のビジネスの状況や組織体制によって唯一の正解はありませんが、ERPの導入・運用から得られるメリットを十分享受できるよう、上記ポイントを十分に検討して最適なERPを選択していただきたいと思います。

ERPの運用について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

 

ERP製品選定のサポートが必要な方は、当社の「ERP系業務パッケージシステムの調達支援サービス」の活用をご検討ください。

 

この記事の編集者

柳元 華奈

柳元 華奈

北京大学日中通訳専門修士卒。日本経済の活性化を目指し、日本のIT変革やアジアとの架け橋となるべく、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 主に民間企業のシステム刷新プロジェクトに従事し、同社のPR・マーケティング全般の業務やIT調達ナビの運営業務にも携わる。

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