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ERPとは?目的や機能、メリット、導入プロセスを徹底解説!

「ERPを知ろうシリーズ」は3部作となっています。(本記事は1本目です)

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1.ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)とは、企業が持つ全ての資源(=「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」)を1か所に集めて管理し、有効活用するという考え方を指します。近年ではそれを実現するシステムを「ERPシステム」と呼びます。他にもいくつか呼称があり「ERP」や「業務統合パッケージ」、「統合基幹業務システム」と呼ぶこともあります。

2.ERPの重要性とビジネスへの影響

ERPシステム(以降、ERPと記載)が登場する以前、多くの企業ではそれぞれの部門が独立したシステムや手法で運営がなされており、異なるデータベースやプラットフォームを使用していました。この結果、データの重複や矛盾が生じやすく、部門間のデータ連携の困難さや非効率性(データの二重入力)が問題となっていました。これは会社の規模が大きくなり、業務が複雑化するほどにより顕著となりました。

こうした背景からERPは開発されました。ERPは製造や人事、顧客関係情報などといった情報(従来では基幹システムでそれぞれ管理されていた)を統一されたデータベースで一元管理することが可能です。これにより情報の一貫性を保ちながら運用を効率化することが出来ます。現代においては企業が直面する市場の変化や競争の激化に迅速に対応するため、ERPは今や組織にとって必須のツールとなっています。

 

では、ERPはどのような目的で企業に導入されるのでしょうか。

一般的には以下の3つがあげられます。

  • 効率的な情報管理:統合されたデータベースにより情二報を一元管理できる。
  • コスト削減: 業務プロセスの効率化により、無駄なコスト(データ二重入力など)を削減できる。
  • 意思決定の迅速化: 一元管理されたデータを基により迅速かつ正確な意思決定が可能になる。

いずれも組織の規模や業界に関わらず、企業の業務全体の無駄を省き、効率化を図ることで全体のパフォーマンスを向上させることが重要となっています。

4.ERPの主な機能とその役割

ERPは多岐にわたる機能を備えており、以下に主要なものを挙げます。

  • 財務管理: 財務の透明性を高め、正確な財務報告と予算管理を支援する。
  • 人事管理: 従業員情報の管理、給与計算、人材開発など、人的資源の最適化を図る。
  • 製造管理: 生産プロセスの最適化を通じて、品質管理とコスト削減を実現する。
  • 在庫管理: 在庫レベルの最適化、コストの削減、及び顧客への迅速な対応を実現する。
  • 販売管理: 受注から発送、請求までのプロセスを統合し、顧客満足度を向上させる。
  • CRM(顧客関係管理): 顧客情報を一元管理し、マーケティングからアフターサービスまでの顧客との接点を強化する。

これらの機能は各企業のニーズに合わせてカスタマイズされることが多く、業種や業態、企業の規模によって重要とされる機能は異なります。しかし共通して言えるのは、どの企業においても一般的に使用されているシステムを統合的に利用することが出来ます。これらの機能により企業の業務効率化の支援を行っています。

5.従来の基幹システムとERPの違い

ERPと従来の基幹システムの主な違いは統合性にあります。従来の基幹システムはそれぞれが担当する情報の管理に特化しています。これを各部門が独立して用いており、一つの部門で生成されたデータを別の部門が活用するには手作業での処理やカスタムメイドのインターフェースが必要でした。これに対し、ERPは全ての業務データを統合データベースに格納し、企業全体で一貫した情報を共有することができます。

また、従来のシステムでは各部門や拠点ごとにバラバラの作業フローが存在していたため、企業全体の最適化は困難でした。しかしERPは業務プロセスを標準化し、全社的な効率化を促進することが出来ます。

6. ERP導入のメリット

6.1 社内データの一元管理ができる

ERP導入の最大のメリットは、自社の全てのデータを一元管理できることです。ERPを導入することで会計、人事、生産、物流、販売など、異なる部門の情報を1つのシステムに集約することができます。

ERPを導入せずに、部門ごとに異なるシステムを利用する場合を考えてみます。例えば「人事業務」のシステムで管理している給与情報を「会計業務」のシステムに入力するといった業務間の処理が発生します。また、業務間の処理の際に入力ミス等によりデータの不整合が発生することがあります。

ERPを導入することで、このようなデータの不整合が発生するリスクを防ぎ、データを一元的に管理することができます。また、法制度の変更等によりシステム設定に変更が必要になった際も、一括で変更することができます。

6.2 生産性・業務効率が向上する

ERP導入により、従業員が本来業務に充てる時間を増やし、生産性を向上させることができます。たとえば、人事部門が管理している給与情報が会計部門のデータに自動的に反映されるため、二重入力がなくなり業務効率が向上します。

6.3 リアルタイムデータにより的確な経営判断が可能になる

ERPは、最新データの参照を可能にするため、経営陣はリアルタイムの情報に基づいて的確な判断を下すことができます。市場の変動や業務の状況を即座に把握し、必要な経営施策をタイムリーに実行することが可能になります。包括的なデータからデータ分析を行うことで、将来のビジネスチャンスを予測し、戦略計画を立てることも可能になります。

7. ERP導入の留意点

ERP導入には社内データの一元管理などのメリットがある一方で、導入の前後で留意するべき点があります。以下で、ERP導入の留意点を3点紹介いたします。

7.1 導入・保守・運用で金銭的コストが発生する

ERPの導入には、導入に関連する初期費用だけでなく、運用と保守にも継続的なコストがかかります。特にERP導入形態の1つであるオンプレミス型の場合、サーバーやネットワーク機器の購入、専門スタッフの人件費、定期的なメンテナンス費用などが必要です。

もう1つの導入形態であるクラウド型の場合でも、サブスクリプション料金が継続的に発生し、機能追加やユーザー数の増加に応じてコストが増加する可能性があります。これらのコストを事前に見積もり、長期的な予算計画を立てることが重要です。

7.2 データの整理が必要

既存のシステムから新しいERPへのデータ移行は、非常に複雑な作業です。多数のデータの整合性を保ちながら、正確に移行することは大きな課題となります。データのクレンジング、マッピング、テストなど、移行には多くのステップが含まれ、十分な計画とリソースが必要です。

7.3 社内教育が必要

ERPを有効に活用するためには、従業員が新しいシステムを理解し、適切に操作できるようになる必要があります。

これには、まず研修の実施が必要です。研修では、単に操作方法を教えるだけでなく、システム導入の目的とメリットを従業員に伝えることも重要です。また、従業員からの問い合わせに対応するサポートデスクの設置が必要な場合もあります。

ここまでERP導入で得られるメリットと留意するべき点を紹介いたしました。続いてERP導入形態について解説します。

8. ERP導入形態

ERPを導入する際には、その形態を選択する必要があります。オンプレミス型とクラウド型の2つの形態が存在し、それぞれにメリットとデメリットがあります。両者の特徴を踏まえた上で、導入するERPを選定することが大切です。

8.1 オンプレミス型

オンプレミスERPは、自社の内部に物理的なサーバーを設置し、その上でシステムを運用する形態です。ERPを構築するサーバーやネットワークの整備が必要なため、導入時のコストは高いですが、カスタマイズ性や機密性に長けています。

メリット

  • カスタマイズ性が高い:独自の業務プロセスに合わせて、システムのカスタマイズが自由に行えます。特殊な要件がある企業にとっては大きな利点となります。
  • 機密性が高い:自社でサーバーを保有するため、システムに対する完全なコントロールが可能です。セキュリティポリシーを細かく設定し、運用の全てを内部で管理することができます。
    運用コストが抑えられる:導入費用は大きいものの、サービスのサブスクリプション料金が発生しないため、運用コストは抑えられます。

デメリット

  • 導入費用が高い:サーバーやライセンスの購入に多額の初期投資が必要です。
  • 保守の手間が大きい:システムの運用・保守を自社で行う必要があり、専門の従業員が必要になります。
  • 柔軟性が欠如している:迅速にシステムを拡張・縮小することが難しい場合があり、急なビジネスの変化に対応できない可能性があります。

8.2 クラウド型

クラウドERPは、クラウド上でERPを提供する形態です。自社でインフラを整える必要がないため、導入までの期間が短く、導入費用を抑えられます。またクラウド上で情報を管理しているため、オンプレ型と異なり、インターネット環境があればどこからでもアクセスできるという特徴があります。一方で、常にインターネットに接続できるような環境整備が必要であり、カスタマイズできる範囲が限られていることも多いです。

メリット

  • 導入費用が安い:ERP導入のためにインフラを整備する必要がなく、初期投資を大幅に抑えられます。
  • 拡張性が高い:ビジネスの成長に合わせてシステムを容易に拡張でき、柔軟性が高いです。
  • 保守が容易である:システムの運用・保守はサービスプロバイダが行うため、社内に専門の従業員を配置する必要がありません。

デメリット

  • 運用コストが高い:サブスクリプション料金が発生するため、長期的に見るとコストが高くなる可能性があります。
  • カスタマイズに限界がある:オンプレミス型に比べてカスタマイズの自由度が低い場合が多く、サービスプロバイダが提供する範囲内で運用する必要があります。
  • 機密性が低い:データが外部のサーバーに保存されるため、セキュリティやプライバシーに関する懸念が生じることがあります。

9. ERP導入の流れ

ERPの導入には、パッケージ化されているソフトウェアを導入する方法(パッケージ導入)と、対象業務に合わせて独自のシステムをゼロから開発する方法(スクラッチ開発)があります。以下ではERPパッケージを導入する際の流れを大まかに解説いたします。

下記のページで一般のシステム発注において、システムを発注する側の企業の担当者が実施すべきことやポイントについて詳細に解説しています。「システム発注について詳しく知りたい!」という方はご参照ください。

システム発注についてもっと知る

9.1 プロジェクト立ち上げ

ERP導入の最初のステップは、プロジェクトの立ち上げです。ここでは、ERP導入の目的を明確にし、それを達成するための計画を策定します。目的が不明確だと、どの製品を選ぶべきか、どの業務プロセスを改善する必要があるかを決定することができません。

また、導入にあたっては、関連するすべての部署が連携し、情報を共有する体制を整える必要があります。加えて、意思決定を行う上層部のサポートがあれば、プロジェクトはスムーズに進行しやすくなります。

9.2 ERPを選定する

次に、自社のニーズに最も適したERPを選定します。選定にあたっては、まず現状分析を行い、ERPに求めることを整理します。その後、導入目的を踏まえた上で、必要な機能を優先順位付けし、市場にある製品を比較検討します。

機能要件だけでなく、システム方式、セキュリティや拡張性などの非機能要件も考慮する必要があります。また、デモンストレーションを依頼し、実際にシステムを体験することも重要です。

9.3 適合していない事項(Gap)への対応策を検討する

ERPに限らず、パッケージ製品において多くの場合、パッケージ標準機能と自社が求める機能に適合しない部分(Gap)があります。Gapがある場合、業務の進め方や方法自体をパッケージの標準機能に合わせて変えるFit to Standardの考え方で対応策を考えることが重要です。Fit to Standardによって、パッケージに別途開発をして機能を追加する「アドオン開発」を必要最小限にし、パッケージ導入までにかかる時間や金銭的コストを抑えることができます。

9.4 インフラを整備し、初期設定やデータ移行を行う

ベンダーとの調整を行い、導入準備が整った後は、ERPを運用するためのインフラを整備します。これには、ハードウェアの選定やネットワークの構築、セキュリティ対策が含まれます。インフラ整備に割くリソースが不足している企業では、クラウドERPの導入を検討してもよいでしょう。

インフラの整備が整ったら、パラメータの初期設定やデータの新システムへの移行を行います。初期設定では、自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズします。データ移行では、必要に応じてデータのクレンジング等を行い、データの整合性を保ちながら正確に行う必要があります。

9.5 ルールを策定し社内教育を行う

ERPを導入した後も、効率的に運用するためには、運用ルールの策定や社内教育が不可欠です。ERPを利用する範囲や使い方を策定し、研修等で説明することで、ERPを浸透させることができます。ERP導入直後は問い合わせが増えるので、サポートデスクを設置しても良いでしょう。

ERPの運用で失敗しないためのコツを下記記事で解説しているので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

10. さいごに

本記事では、ERPとはなにか、またERP導入の是非を判断する材料として、導入におけるメリットと留意すべき点、導入形態、そしてERP導入のプロセス、について解説しました。ERPは自社のデータ管理を一元化し、業務効率を大幅に向上させる一方で、導入に際しては適切な導入計画、コスト管理、製品選定、社内教育が不可欠です。
本記事の情報をもとに、自社でERPを導入するべきかどうかを検討していただければ幸いです。

また、ERP選定におけるポイントや注意点については下記の記事で紹介していますので、是非ご覧ください。

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この記事の編集者

柳元 華奈

柳元 華奈

北京大学日中通訳専門修士卒。日本経済の活性化を目指し、日本のIT変革やアジアとの架け橋となるべく、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 主に民間企業のシステム刷新プロジェクトに従事し、同社のPR・マーケティング全般の業務やIT調達ナビの運営業務にも携わる。

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