
GIGAスクール構想で実現する一元管理とは?教職員の負担軽減とICT活用を両立する方法
目次
1.一元管理とは?一括管理との違い
「一元管理」と「一括管理」は似て非なる概念です。ネットワーク環境を例に説明しましょう。
「一括管理」は、ネットワーク機器の種類と管理システムがバラバラの環境を担当者がまとめて管理している状態になりますが、「一元管理」はネットワーク機器の種類と管理システムが統一され担当者がまとめて管理している状態になります。
このように、「一括管理」は管理する対象をまとめているだけになりますが、「一元管理」は管理対象、管理方法まで統一して管理する事を意味しています。
2.一元管理のメリット
「一元管理」のメリットについて、GIGAスクール構想で整備したネットワーク環境を例に説明します。
学校にはルータ、スイッチ、アクセスポイントなどのネットワーク機器が、職員室や教室などに設置されています。これらの機器のメーカーや管理システムがバラバラで統一されていない場合、不具合発生時に機器のメーカーごとに管理システムや問い合わせ先が異なってしまうなど、運用保守が非常に煩雑になってしまいます。
これらの機器が同一メーカーで統一され、同一の管理システムで「一元管理」されていれば、ネットワーク環境全体の状況を簡単に把握する事ができるため、効率的に運用保守を行うことができます。
「一元管理」できた場合のメリットは、大きく以下の2点になります。
・不具合の早期検知、早期復旧 → 学校への影響の最小限化(授業に支障がでない)
・運用保守の効率化 → 教職員の業務負担軽減
これらのメリットを教育委員会や学校現場の教職員が体感できるようになると業務の効率化だけではなく、小・中学校でのICT利活用推進に繋がっていきます。
3.一元管理できる環境整備のために必要なことは
「一元管理」ができる環境を整備するために必要な事は、第2回の記事「GIGAスクール構想第2期 ネットワーク環境改善・再整備の注意点について解説!」内にある「授業で児童生徒がストレスなく端末を使用できるネットワーク環境の整備」と繋がるのですが、環境構築だけを考えるのではなく、整備した環境の運用保守、活用まで含めて考える事です。「学校現場に求められるICT環境」と「運用保守に求められるICT環境」を理解しておく事がとても大切です。
ネットワークアセスメントについて知りたい方は下記の記事をご覧ください。
そのためには、学校のICT環境を整備する前に学校現場の課題や必要となるICT環境を把握し、構築するICT環境の全体像を可能な限り検討する必要があります。
環境構築は基本的にベンダーが行いますが、運用保守は教育委員会の担当者や学校現場の教職員とベンダーが協力して実施する事になりますので、運用保守が上手くできないと教職員の負担が増えるだけでなく、端末の活用も進まなくなってしまいます。
学校の先生や児童生徒が配布された端末を活用するだけでよいICT環境を整備できるのが理想なのですが、予算は限られているため、費用とのバランスを取りながら理想に近い環境を整備するために「一元管理」が重要になります。しかし、ネットワーク、端末、ソフトウェア、セキュリティなど検討しなければならない事が多岐に渡るため、教育委員会の担当者だけで検討するのは難しいと思います。
求められる適切な環境を整備するためには、教育委員会や学校の状況を理解した上で、専門的な知識が必要となりますので、「一元管理」できる環境を整備した実績のある専門家への相談も検討されるとよいと思います。
4.ネットワーク環境の一元管理
ネットワーク環境の「一元管理」について説明します。
ネットワーク環境について「一元管理」を行うためには、ネットワーク機器の入れ替えを実施するタイミングで、機器と管理システムを同一メーカーにするなど、機器とその管理方法を統一する事が必要です。一括で機器を入れ替えることが出来ない場合でも、少し時間はかかりますが同一メーカーの機器へ順次入れ替えていくことで、統一された環境を整備する事が可能です。
しかし、機器も管理システムも統一された環境が整備されているにもかかわらず、業務が煩雑で担当者の負担になっている事もあると思います。もし、そのような状態になっている場合は、運用ルールに問題があると考えられます。
「一元管理」を実現するためには、さらに以下の様な事について検討する必要があります。
・機器の故障の影響範囲が最小になるネットワーク構成
・不具合(故障した)箇所がすぐに分かる機器、配線等のネーミングルール
・端末の活用とセキュリティのバランスを考えたSSIDの設定 など
このように、「どのようにすれば業務を効率化できるか」を考えた上で、構築する環境の仕様を決めていくことでネットワーク環境の運用保守を効率化する事が出来ます。
5.端末環境の一元管理
端末環境の「一元管理」について説明します。
GIGAスクール構想で整備された端末とMDM(モバイルデバイス管理)はセットで導入されているため、「一元管理」できる環境となっているにかかわらず、業務が煩雑で担当者の負担になっている事があるのではないでしょうか。
端末も管理システムも統一しているのに業務負担が増えてしまう原因は、端末のネーミングルールや、運用ルールの考慮不足による場合がほとんどです。教育委員会で管理する端末は数千台~数万台になるため、効率よく管理するためには端末と管理システムの統一だけでなく、様々な場面を想定した運用ルールや端末のネーミングルールなどの検討が必須です。
このように、環境整備だけではなく端末の故障時の対応や年度末の端末回収、年度初めの端末配布などがスムーズに実施できる運用手順まで考えられていると、学校での端末活用が推進されます。
6.GIGAスクール構想第2期で環境を一元管理するためには
GIGAスクール構想第2期の環境を「一元管理」するためには、ネットワーク環境整備と端末環境整備について同時に検討を行う事が必須となります。
GIGAスクール構想第1期で整備された端末は、インターネットやクラウドを使用する事が前提となっています。そのため、ネットワークと端末はセットで考えて整備を行う必要があったのですが、多くの教育委員会ではこれまでと同じように、ネットワークと端末を切り離して別々に環境を整備されたのではないでしょうか。ネットワーク環境と端末環境を切り離して整備すると、端末の不具合が発生した場合、何が問題で端末が動作しないのかを把握するのに時間がかかり、学校での活用に支障が出るだけではなく、学校現場や運用保守の担当者の業務負担が増加してしまいます。
もし、このような状態になっているのであれば「一元管理」できる環境を構築することで、この様な状態を解決する事ができますので、現在の環境の把握と今後の環境整備方針の検討が重要となります。
7.まとめ
ここまでに説明させて頂いたとおり、整備したネットワーク環境と端末環境を「一元管理」できていないと「端末が動かない」「ネットワークに繋がらない」など、不具合発生時の対応に時間がかかり教職員の負担が増えるだけでなく、学校現場では「授業で端末を使えない」となってしまい、端末が活用されなくなってしまう可能性があります。
このような事にならないようにするためには「一元管理」できる環境と適切な運用ルールの整備が必須であるという事を説明させて頂きました。
そして、適切な運用ができる環境を構築できれば、管理ツールや運用保守業務の無駄も省くことができるため「教職員の業務負担軽減」「端末の活用推進」だけでなく「運用保守のコスト削減」も同時に実現できます。
このように、GIGAスクール構想第2期以降では「学校現場に求められるICT環境」と「運用保守に求められるICT環境」の両立が求められるため「一元管理」の重要性をご理解いただけたのではないかと思います。
次回の「校務DX環境整備(GIGAスクール構想環境と校務環境の統合)」の記事では、今後導入する校務支援システムに求められる仕様やGIGA環境と校務環境の統合を検討する際に、追加で考慮が必要となるソフトウェアやアカウントの「一元管理」についても解説しますので、参考にしていただければと思います。
GIGAスクール構想で整備したネットワーク環境の改善・再整備についてお困りのことがあれば、IT調達ナビを運営するGPTechまでお気軽にご相談ください。