PMO(全体管理組織)が初期段階で取り組むべき業務を解説します
本記事では、公共組織において「PMO(Portfolio Management Office)」と呼ばれる全体管理組織を設置する場合、まずはどのような業務から取り組んでいくべきなのか解説します。
現在、独立行政法人は中期計画においてPMOの設置目標を定めることとなりましたが、実際にPMOがどんな組織なのか、どのようなスキルセットの持つ人材をどれくらい配置し、どのような業務を推進していく必要があるのか、具体的な情報がない状況です。
そんな中で、ITガバナンスの体制を強化するために、PMOの設置に向けて具体的な検討を開始したいと考えている独立行政法人の方に向けて、PMOが初期段階で取り組むべき業務や意識すべきポイントについて、本記事で解説します。
独立行政法人を取り巻くデジタル政策について解説している記事はこちらからご覧ください。
目次
PMO(Portfolio Management Office)が期待されていること
PMO(Portfolio Management Office)は、ITガバナンスの中核として役割を果たす組織であり、IT施策全般に対して関与し、全体管理の機能を担う組織です。
PMOの機能や業務例について詳しく解説している記事はこちらからご覧ください。
デジタル・ガバメント推進標準ガイドラインでは、「ITガバナンス」は以下のように定義されています。
ITガバナンスとは、政府全体を統括するデジタル庁並びに各府省を統括するデジタル統括責任者及び副デジタル統括責任者を中心とした体制において、サービス・業務改革並びにこれらに伴う政府情報システムの整備及び管理に係る個々のプロジェクトを、全体的かつ適正に管理するための仕組みを組織に組み込み、機能させることによって、政府情報システムに係る課題解決のみならず、各組織の政策目的を実現し、個々のプロジェクトをマネジメントするだけでは出し得ない価値(便益の実現、リスクの適正化、資源の適正化)を生み出していくためのものである。
PMOは上記に記載のITガバナンスを実現させるために必要となる組織であり、マネジメント機能はもちろんですが、マネジメントするだけでは出しえない価値を生み出していくことが期待されています。
PMOの業務は「情報の一元管理」から始める
PMOがマネジメントを機能させるためには、貴法人内に、どのような情報システムがあり、どのような情報システム予算が要求され執行されているか、どのような情報システムが調達されているのか、をまずは把握する必要があります。
情報システム台帳の整備
PMO業務の第一歩目として、貴法人内の情報システムの情報を一覧化して台帳として整備しましょう。
なお、既にセキュリティ担当部署などで情報システムが一覧化されている場合もあるかもしれません。情報システム台帳として把握しておく事項は以下のようなものがあげられます。
まずは上に記載しているものから順に、徐々に後半に記載している事項も把握できるとよいでしょう。
- 情報システム名
- 担当部署
- 情報システムの用途
- 主要ユーザの属性
- 情報システムの設置環境やネットワーク環境
- 利用期限やサポート期限
- 情報システムの主要課題や今後の取り組みの方向性 など
また、個々の情報システムの状況は移り変わるため、少なくとも年に1回は最新化し、毎年変更の有無を確実に確認するような仕組みまで作り上げられるとベストです。
情報システム予算の管理
貴法人内にある情報システムの概要が把握できれば、次に情報システム予算を一覧化します。
一覧化する際には、予算の所管部署・担当者名、関係するサービスや業務、昨年度の要求額、昨年度の執行額、今年度の要求額、予算の内訳、調達する場合は予定している調達方式、継続契約の場合は事業者名などの情報を把握します。
情報システム調達の管理
情報システム予算が把握できれば、自ずと情報システムの調達の情報も見えてきます。
情報システムの調達においても、調達の担当部署・担当者名、予定している調達方式、入札価格、調達のスケジュールなどの情報を把握し一覧化します。
PMOは“管理”だけではなく“支援“も行う
PMOは、独立行政法人の情報システムの状況が把握できれば、予算の審査や調達の審査にも関与し、適正な予算や調達になるような管理をしていく必要があります。
ただし、管理だけを進めてしまうと、現場の担当者から敵対心を持たれる可能性もあり、反抗されてうまくコミュニケーションができず、PMOの役割を果たすことができないリスクもあります。
そのため、PMOを根付かせるために重要なのが「管理」機能と同時に「支援」機能も提供することです。
予算要求時の支援
予算要求時においては、予算要求に向けた本格的なスケジュールが始まる前にPMOへ相談するための期間や窓口を設けることが、「支援」機能の一つとして考えられます。
例えば、新しいサービスを開始するにあたり新システムも導入することになったが、予算要求資料に何をどのように書けばよいのか分からない、という方にPMOに相談しに来るように呼びかけます。
相談に来た現場の担当者に対して、PMOからはヒアリングを行い、予算要求に向けてどのような検討を進めればよいか、どのようなことに気を付けるべきかといった助言をします。1回だけにとどまらず、必要な場合は複数回コミュニケーションをとりながら、現場の担当者が予算要求に向けて検討を詰められるようにします。
また、情報システム予算を審査する際にもただ中身を見て評価をするのではなく、どうすればもっとコストが削減できそうかなどの助言をして、現場の担当者に「PMOに見てもらってよかった」と実感してもらうことが重要です。
調達時の支援
調達においても、調達仕様書の内容をPMOが事前にチェックすることが、現場の担当者への支援につながると考えます。
調達仕様書の中身に対して助言をすることはもちろんですが、現場の担当者が検討を進めやすいように調達仕様書のひな形を作成することによって全体の検討レベルを底上げすることができます。
PMOのスタートダッシュを切るための2つのポイント
PMOが初期に取り組むべき業務についてイメージがついていれば幸いですが、これらの業務を機にPMOがよいスタートダッシュを切るために意識しておきたいポイントが2つあります。
ポイントは、「情報が集まりやすい仕組み・関係性を構築する」と「支援機能を提供できる体制を整える」です。
情報が集まりやすい仕組み・関係性を構築する
まずは情報を一元化して把握することから進めていきましょうという話をしましたが、現場からの情報が集まりやすい仕組み作りや、現場との良好な関係性を構築することが肝要になります。
PMOの業務が開始した初期の段階で、”管理”や“統制”の色が強いメッセージを発信して情報を集めてしまうと、なかなか現場からは情報を提供してくれず、相談に来てもらうことも難しいでしょう。
そうなってしまうと、ITガバナンスの目的である、マネジメントをするだけでは出しえない価値を生み出していくことができなくなってしまいます。
そのため、PMOの存在理由や役割について、現場と丁寧にコミュニケーションをとって理解を得ることが必要になります。
支援機能を提供できる体制を整える
また、“管理”だけではなく“支援”機能の提供が必要だとお伝えしましたが、裏返すと、現場の情報システムの検討に助言できるだけのITやデジタルに知見のある人材をPMOの体制に加える必要があります。
初期の段階から職員のみでPMOを運営していくことは、稼働の工数や経験値の側面からもハードルが高いと考えられるため、まずは外部の専門家の力を借りながら、徐々にPMOの体制を拡充していくことがよいと考えられます。
PMO(Portfolio Management Office)という組織が、どのような業務を行う組織でどのような価値を発揮する組織なのか、本記事を通して少しでも伝わっていれば幸いです。
IT調達ナビの運営会社である、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーは、独立行政法人向けにPMO支援サービスを提供しています。
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