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IT人材不足はなぜ?JUAS調査から見る現状と今後の対応策を分かりやすく解説!

本記事では、一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書」と、経済産業省の「IT人材白書」(現「DX白書」)をベースに、IT人材不足の現状について説明します。

DXを推進したくとも、鍵となるIT人材が不在で、思うようにDXを進められていない企業も多いのではないでしょうか?
なぜIT人材が不足するのか、構造的な要因まで踏み込んで解説していますので、興味・関心のある方は是非読んでみてください。

1.JUASの企業IT動向調査報告書とは

冒頭でも述べた通り、本記事は「IT人材不足」問題について、JUASの「企業IT動向調査報告書」を用いて説明します。

そもそも、JUASとは「一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会」の略であり、ITの利用に関する調査や研究、情報の収集、提供等を行っている団体です。

1994年以降、JUASは毎年「企業IT動向調査報告書」を公開しており、当該報告書の最大の特徴はアンケート対象企業数や業種の幅広さにあります。具体的には、「企業IT動向調査報告書2023」では28業種4,500社を対象として、回答したのは1025社です。

その調査結果の信頼性から、多くの省庁レポートや民間レポートでもJUASのレポートは引用されています。例えば、2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」も、その主張の多くはJUASのレポートに準拠しており、「企業IT動向調査報告書」の他、同じくJUASの「デジタル化に対する意識調査」等も活用しています。

本記事でも、「IT人材不足」問題の正確な現状把握のため、「2-1. IT人材不足の現状」では、JUASの「企業IT動向調査報告書2023」を用いて解説します。

※詳細な調査方法やアンケート情報については、JUASのホームページをご参照ください。
https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/

2.DX推進の要となる「IT人材不足」の現状と原因

2.1 IT人材不足の現状

DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集め、デジタル技術を活用した業務改善や事業企画を担うIT人材の需要が高まっています。従来はベンダー(システム開発事業者)が担当していたシステム開発においても、最近では内製化が進み、IT人材を雇入れる事業会社も増えてきました。そのような状況を背景に、IT人材不足が深刻化しているといわれています。

例えば、IT関連市場規模の拡大に伴ってIT人材の不足は年々増加すると予測されており、2030年には最大約79万人のIT人材が不足する見込みであるとの結果も出ています。(経済産業省、「IT人材需給に関する調査」、2019年)

2.2不足する人材タイプと求められる人材タイプ

それでは、具体的にどのようなIT人材が不足しているのでしょうか?
図1は、IT部門要員全体および13種の人材タイプについて、要員数の充足状況(充足している企業の割合)を示したものです。

人材タイプのうち、「運用管理・運用担当」は65%、「ベンダーマネジメント担当」は61.7%が「概ね充足」と回答しており、約6割の企業でこれらの人材は充足している状況となっています。

一方で、DX推進と関連の深い「IT戦略担当」は29.6%、「業務改革推進・システム企画担当」は31.3%と、充足している企業の割合は3割前後となっており、「DX推進担当」は17.4%とさらに低い値となっています。DX推進に関しては企画面のみならず、実行面での人材の獲得・確保にも課題があるといえそうです。


図1 人材タイプ別の充足状況

また、図2は情報システム組織(IT部門、情報子会社)が重視する人材タイプについて現状と今後を比較した図です。

現状は「情報セキュリティ担当」が47.9%と最も高く、「運用管理・運用担当」や「インフラ・ネットワーク担当」等の従来の情報システム部門の機能に関連する人材タイプも3割程度と重視する傾向にあります。

しかし、今後重視する人材タイプをみると、「IT戦略担当」が46.9%と最も高く、「運用管理・運用担当」は-13.9%、「インフラ・ネットワーク担当」は-11.9%となっていることから、従来の情報システム部門の機能に関連する人材タイプは、現在は相応に重視されているものの、将来的には低下し、DX推進に関連する人材タイプをより重視する方向にシフトしていくことが分かります。


図2 情報システム組織が重視する人材タイプの現状と今後

※情報システム部門の機能およびあるべき姿については、以下の記事もご参考ください。
情報システム部門が企業価値向上に貢献するために取り組むべき2種類の施策

2.3 IT人材不足の原因

それでは、なぜIT人材は不足するのでしょうか?

冒頭で言及したように、DX(デジタルトランスフォーメーション)やシステム内製化等によるIT人材の需要拡大が背景としてありますが、より根本的には、IT人材の所属先の偏りが関連しているものと考えられます。

図3は日本、米国、カナダ、イギリス、ドイツ、フランスのIT人材の所属先を、「IT企業」と「それ以外の企業」に分けて⽐較したものです(情報処理推進機構、「IT人材白書2017」、2017年)。日本はIT企業に所属するIT⼈材の割合が72%と突出して高くなっている⼀方、日本以外の国では、IT企業以外の割合が50%を超えています。


図3 国ごとのIT人材の所属先

そのため、日本においては事業会社等(「それ以外」の企業)においてIT人材の不足がより感じられやすい状況となっており、次にあげるような対応策が必要となってきます。

3.不足する人材タイプごとの対応方法

図4は、IT人材不足に対する対応施策を人材タイプ別に比較した図です。

IT 部門要員全体の人材不足への対応策は、「不足スキルを持った人材の採用」および「外部リソースの活用」が高い状況となっていますが、人材タイプに応じて対応施策は異なります。

例えば、「既存社員の再教育(リスキリング)」は、「情報セキュリティ担当」「インフラ・ネットワーク担当」「ベンダーマネジメント担当」等で高い数値となっており、これらの情報システム部門に必ず必要とされる人材タイプに対しては、再教育が効果的な育成方法となることが分かります。

一方で、「外部リソースの活用」は「新技術調査担当」等で高い数値となっています。「外部リソースの活用」は、主に自社内での教育が難しい(ナレッジがない)、または自社内でのリソースを活用するよりは外部市場からの調達が可能(割安)な場合に選択されることが多いですが、「外部リソースの活用」と一口に言っても、当該外部事業者によって質は全く異なるため注意が必要です。


図4 人材タイプ別のIT人材不足に対する対応施策

4. 協調型アウトソーシングの活用によるDX推進

IT人材不足の対応策のうち、「外部リソースの活用」には大きく2種類があり、ひとつは特定の業務全体を自社業務から切り離し、外注すること(一般に分業型アウトソーシングと呼ばれるもの)があります。しかし、それでは、ナレッジが自社内に蓄積しにくいため、特にDXを推進する場合には、適した選択肢とは言えません。

DX推進は継続して行っていくものでありますから、最終的にはクライアント企業自身でITケイパビリティを高めていく必要があるが、その前段階としては協調型アウトソーシング等を通してナレッジを蓄積していくことも有効な選択肢だと考えます。

協調型アウトソーシングとは、企業(アウトソーシングの依頼主)が推進主体、アウトソーサーが補完的役割を担いつつ、協調して業務を進める伴走型支援を指します。アウトソーサーのもつスキルやノウハウでサポートを受けることで、投資リスクを抑制する形でプロジェクトを立ち上げられ、社員にとっては実践機会を通じて実行力を強化することができます。

本記事を執筆・編集したGPTechは、「この国のシステム発注の常識を変える」ことを理念に掲げるITコンサル企業です。
自社内に開発部隊をもたず、システム開発会社とも中立的というビジネスモデルを確立しています。
また、システム導入自体はクライアント企業様にとってはスタートでしかないと認識しているため、発注者側のケイパビリティ向上、体制強化を重要視しながらコンサルティング業務を行っております。

この記事の編集者

関 孝善

関 孝善

IT調達ナビの運営会社である、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 同社のシステム発注側に立って支援するITコンサルティング業務で得られた経験から、システム発注に関わる人々の役に立つ記事を執筆する。

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