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デジタルデバイドとは?取組の必要性や対策についてわかりやすく解説!

本記事では、自治体がDX推進と併せて取り組むべき事項とされている、避けては通れない課題である「デジタルデバイド」について解説するとともに、自治体における対策の必要性や今後の方向性について、取組事例も踏まえて考察しています。
※自治体DXについてはこちらの記事もあわせてご確認ください。

1.デジタルデバイドとは

デジタルデバイドとは、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」のことを言い、「情報格差」「デジタル格差」等とも表現されます。具体的には、高速なインターネットや最適なデバイスの利用、習得できる知識や技術等に差があり、得られる利便性や情報にも格差が生まれるといったことを指しています。世界的な議論となったのは1990年代後半です。インターネットの普及が進み、そのアクセス機会によって一部の人々が恩恵を受ける一方、取り残される人々が出てくるということが懸念されるようになったことが要因です。日本でも、2000年の沖縄サミットにおいて主要な議論となったことで社会的な課題として認識されるようになりました。

1-1.デジタルデバイドの種類

デジタルデバイドには様々な側面での問題があり、主に「国際間」、「地域間」、「個人・集団間」といった区分で論じられます。
国際間のデジタルデバイドとは、主に先進国と発展途上国等との間に生じる情報格差(通信インフラや電子政府の整備状況含む)のことですが、国内でのデジタルデバイドの議論としては、「地域間」「個人・集団間」の格差について問題視されることがほとんどです。
地域間のデジタルデバイドとは、都市部と地方とでのインフラ整備状況や、それにより受けられるサービスの違いや利用率といった格差のことを指すことが多く、個人・集団間のデジタルデバイドとは、年齢、障害の有無、学歴、収入(所得)といった個人や集団の属性による差によって生じる情報格差のことを指しています。

1-2.デジタルデバイドの要因

では、なぜこのような格差が生じるのかについてですが、地域間の格差であるインフラ整備によるインターネット環境の違いやサービスの違いの要因となるのは、人口減少や高齢化といった地方の抱える課題や、それに起因する自治体のデジタル化の遅れによるものと考えられます。
個人・集団間の格差は、年齢によるアクセス機会の差、収入・経済の差による環境整備の状況によるものや、受けられる教育・学歴の差により情報や技術を活用する知識(情報リテラシー)に差が生まれるといった要因が考えられます。

1-3.デジタルデバイドの問題点

デジタルデバイドがなぜ問題とされているのでしょうか。それは、デジタルデバイドによってその要因となる様々な格差が拡大すると考えられるからです。先にも記した都市部の若者と地方の高齢者の場合でも、地域差と年齢差という単純な違いに、得られる情報の差(質・量)や情報技術の利活用力の差 が加わったとき、その収入の差がより広がることや、生活の質の差がより大きなものになるということが容易に想像できます。

2.デジタルデバイドへの対策

国は、このようなデジタルデバイドを解消し、「誰一人取り残さない」デジタル化を進める、といしています。そのため、デジタルデバイド対策はDXの取組とあわせて取り組むべきデジタル社会の実現に不可欠なこととされており、国や自治体では様々な支援策を実施しています。

2-1.デジタルデバイド対策の事例

地域格差を無くすためのインフラ整備や、経済格差や教育格差を排除するための公立学校への情報端末整備、情報弱者を支援する技術開発や講習等を行う企業への様々な補助事業等、国を挙げて実施している施策も多くありますが、ここでは自治体におけるデジタルデバイド対策事例をいくつかご紹介します。

  • 東京都「高齢者のQOL向上のためのデジタル活用支援事業」
    高齢者を対象に、常設のスマートフォン相談会や各種アプリを活用しての操作講習、交流の場等を設けている
  • 渋谷区「高齢者デジタルデバイド解消に向けた実証事業(スマートフォン貸与)」
    スマートフォンを保有していない高齢者を対象とし、区がスマートフォンを無料で貸し出し、機器やアプリについての操作方法などを講習会や個別相談会を実施(実証事業は終了)
  • 山口県宇部市「地域の要望に応じた高齢者向けスマホ教室の開催」
    地区のふれあいセンター等で初級からアプリ活用等まで地区毎の要望に合わせた講座を開催。無償ボランティアで大学生が高齢者のサポートをするなど、世代間交流等の地域コミュニティ活性化も実現している

 

他にも多くの団体で取組がされていますが、既に実施されている対策としては、高齢者向けのデジタル利活用支援が主流になっています。

2-2.今後必要とされる対策

既存の取組のように、デジタル機器の購入、利用方法等を支援することももちろん重要ですが、電子行政サービスの利用状況を見てみると、60代以上の世代では「利用したいが困難である」人より、「電子行政サービスを必要としていない」人が圧倒的に多いことがわかります。また、その他の世代に関しても、20%程度の人は共通して同様の状態であることがわかります。これにより行政サービスのデジタル化により恩恵を受ける人とそうでない人が生まれている現状です。

出典:「総務省 令和4年版情報通信白書」

このことが示すのは、そもそも行政の提供するデジタルサービスが役に立つと認識されていないという問題です。
つまり、便利で使いたくなる、使わなくては困る、使いやすい、という良質なサービスを提供し、それを利用するために必要な方への支援をする、ということが今後の自治体に求められることなのではないでしょうか。

2-3.社会課題へのプロジェクトマネジメント手法の適用

デジタルデバイド対策については、単発的な一過性の取組だけではなく、継続した取り組みが必要になります。その際、社会課題解決のためにプロジェクトマネジメント手法を適用することが有効です。
利用者が本当に求めていることが何なのか、使いやすさとは何なのか、自地域でどのような社会を実現したいのか、といったことを、データを活用して検証し、サービスとして実現していくサービスデザイン思考を実践することから始め、困っている当事者だけではない行政やサービス提供者等のステークホルダーマネジメントや、デジタルデバイドの解消により得られる社会的価値を定義するベネフィットマネジメント、最適な方策を見出すため試行錯誤を繰り返すアジャイルの実践、地域全体の課題を解決するために複数の事業を組み合わせ実践するポートフォリオ・マネジメント、それらを継続していくための仕組みを作るビジネスモデルデザインといった手法を活用することで、デジタルデバイドの解消と同時によりよい地域社会の構築に繋がるのではないでしょうか。
今後はデジタルデバイドについても、一つの課題解決だけではなく、地域社会全体の課題解決という視点を持った対策がより重要になってくるものと考えています。

3.まとめ

デジタルデバイドとその対策について解説しました。GPTechでも自治体でのシステム調達を支援していますが、その際多くの団体ではシステム化の仕様を検討する過程で「誰のために、何を目指すのか」という根本を忘れがちになってしまうと感じています。
プロジェクトに関わるメンバーがサービスデザイン思考を徹底してシステム化の方針を立て、それを実現するために必要なことが何かを考える、それが自身の関連する業務だけではなく、地域社会全体にどのような影響を与え、価値を提供できるのか、ということを前提に事業を実施することで、自治体のサービスはより良くなり、それを活用する・活用したい人が増え、職員のリソースを情報弱者の支援に振り向けることが可能になる、といった好循環が生まれると考えています。
GPTechでは、そのような自治体プロジェクトの立ち上げ支援も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

 

この記事の編集者

下里 朋子

下里 朋子

IT調達ナビの運営会社である、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに中途入社。ITコンサルティング業務に従事しつつ、IT調達ナビでシステム発注に役立つ記事を展開するメディア運営業務にも携わる。

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