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ビジネスアナリシスとは?BABOKの知識エリアと合わせて解説!

ビジネスアナリシス(Business Analysis)とは、ビジネス目標を実現するために、何が課題で、どのような変革が必要かを明確にする活動です。

システム導入や業務改革を成功に導くうえで欠かせないのがビジネスアナリシスです。IT投資の目的が「システム導入」ではなく「ビジネス価値の創出」であることを再確認し、そのために必要な活動を体系的に整理するのがビジネスアナリストの役割です。

ビジネスアナリストは、ビジネス部門・IT部門・外部ベンダーなど、複数のステークホルダーの橋渡し役を担い、要求事項の整理、合意形成、価値検証をリードします。

本記事では、ビジネスアナリシスの知識体系をまとめたBABOK®の知識エリア、さらにビジネスアナリストとプロジェクトマネージャ―の役割の違いや、ビジネスアナリシスを行う上での代表的な分析手法までわかりやすく解説します。

なお、PMIからビジネスアナリシス・ガイドが発行されており、BABOK®と異なる知識体系でビジネスアナリシスの知識がまとめられています。

よくある質問

なぜビジネスアナリシスを行うのですか?

プロジェクトが失敗する多くの原因は、技術的な問題ではなく、プロジェクトの目的の曖昧さや誤解にあります。そこでビジネスアナリシスは以下の目的で実施されます。

  • 「やるべきこと」と明確にする:プロジェクトが始まる段階で目的が曖昧であったり、解決するべき課題が不明確なままプロジェクトが進んだりすることを防ぎます
  • 関係者間の認識を合わせる:経営層・IT部門・システム利用部門がそれぞれ異なるゴールを持ちやすいため、共通の価値認識を作る役割を担います
  • 要求事項の追加やスコープ逸脱を防ぐ:本来必要なことと、あとから追加された要望を区別し、本来のプロジェクト目標を見失うことを防ぎます

ビジネスアナリシスが不十分だと関係者間での課題の誤認スコープの肥大化成果が業務価値につながらないなどの問題が生じる可能性があります。

BABOK®の知識エリアにはどのようなものがありますか?

ビジネスアナリシスの方法論を体系的にまとめたものが、IIBA(国際ビジネスアナリシス協会)が定義する「BABOK®(Business Analysis Body of Knowledge)」です。

BABOKでは、ビジネスアナリシスの活動を、以下の6つの知識エリアの32タスクに分類しています。

知識エリア タスク
ビジネスアナリシスの計画とモニタリング

・ビジネスアナリシスへのアプローチを計画する
・ステークホルダーの分析を主導する
・ビジネスアナリシスのアクティビティを計画する
・ビジネスアナリシスのコミュニケーションを計画する
・要求マネジメントプロセスを計画する
・ビジネスアナリシスのパフォーマンスをマネジメントする

引き出し

・引き出しを準備する
・引き出しのアクティビティを主導する
・引き出しの結果を文書化する
・引き出しの結果を確認する

要求のマネジメントとコミュニケーション

・ソリューションスコープと要求をマネジメントする
・要求のトレーサビリティをマネジメントする
・再利用に備えて要求を保守する
・要求パッケージを準備する
・要求を伝達する

エンタープライズアナリシス

・ビジネスニーズを定義する
・能力ギャップをアセスメントする
・ソリューションアプローチを決定する
・ソリューションスコープを定義する
・ビジネスケースを定義する

要求アナリシス

・要求に優先順位を付ける
・要求を体系化する
・要求の仕様化とモデリングを行う
・前提条件と制約条件を定義する
・要求を検証する
・要求を妥当性確認する

ソリューションのアセスメントと妥当性確認

・提案ソリューションをアセスメントする
・要求を割り当てる
・組織の準備状況をアセスメントする
・移行要求を定義する
・ソリューションを妥当性確認する
・ソリューションのパフォーマンスを評価する

プロジェクトマネージャーとビジネスアナリストにはどのような違いがありますか?

ITプロジェクトにおいて混同されやすいのが、プロジェクトマネージャーとビジネスアナリストの役割です。

両者の主な違いは以下の通りです。

観点 プロジェクトマネージャー ビジネスアナリスト
目的 プロジェクトを成功裏に完遂すること プロジェクト目標を明確にし、最適な解決策を提案すること
フォーカス スコープ・品質・コスト・スケジュール等 要求事項・課題・合意形成等
スキル スコープ管理・品質管理・コスト管理・進捗管理 要求整理・課題分析・ファシリテーション
成果物 WBS・進捗報告書 戦略立案書・業務フロー

 

プロジェクトマネージャーが「どうやって進めるか」を管理するのに対し、ビジネスアナリストは「何を実現するか」を定義します。両者が連携し、プロジェクトを推進することが成功の鍵です。

ただし、日本ではビジネスアナリストとして仕事をしている人が少なく、プロジェクトマネージャーがビジネスアナリストの役割を兼任していることが多いです。

ビジネスアナリシスにはどのような方法がありますか?

ビジネスアナリシスでは、課題抽出・要件定義・合意形成を支援するための多様な手法が用いられます。代表的なものを以下に紹介します。

1.MOST分析:ミッション・目標・戦略・戦術を整理し、組織のミッションと戦術レベルの行動の整合性を確認する際に活用

2.SWOT分析:強み・弱み・機会・脅威を整理し、戦略立案に活用

3.BPMN(業務フロー図):業務プロセスを可視化し、As-Is/To-Be分析に活用

4.ユースケース図/ユースケース記述:ユーザー視点から機能・要件を明確化

5.ステークホルダーマップ:関係者の利害関係・期待を整理し、調整方針を策定

まとめ:ビジネスアナリシスは「価値創出」の起点

ITプロジェクトはシステムを作ることが目的ではなく、ビジネス価値を生み出すことが目的です。ビジネスアナリシスはその出発点として、課題の本質を捉え、最適な解決策を導くためのフレームワークを提供します。

BABOKの知識エリアを意識し、プロジェクトマネージャーや開発チームと協働しながら、「なぜ」「何を」「どう実現するか」をつなぐ存在としてビジネスアナリストが活躍することで、プロジェクトの成功確率は格段に高まるでしょう。

この記事の編集者

藤﨑 碩人

藤﨑 碩人

大学・大学院では数学を専攻し、IT調達ナビの運営会社である、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒で入社した。 公共組織のITガバナンス、マネジメント支援業務に従事し、同社のメディア運営業務にも携わる。応用情報技術者・ITコーディネータ。

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