GIGAスクール構想第2期 ネットワーク環境改善・再整備の注意点について解説!
目次
0.はじめに
令和7年度からGIGA第2期がはじまります。端末入替やその補助金についての情報は、様々なところで見つけることが出来るのですが、ネットワーク環境の再整備についての情報はほとんど見かける事が無いように感じます。
令和6年4月に文部科学省から「GIGAスクール構想の実現 学校のネットワーク改善ガイドブック」が出されていますが、これはアセスメントをどのようにすべきかという事の解説までになっていますので、不具合の原因が分かった後に何をしなければならないかという部分が書かれていません。
本記事では、ネットワークアセスメントを実施したあとに、どのような事を検討し実施する必要があるかについて、簡単にまとめていますので、是非ご覧ください。
1.GIGAスクール構想第2期 ネットワーク環境改善・再整備を失敗しないために
前回のGIGAスクール構想特集①「GIGAスクール構想の実態とは?」では、ネットワークアセスメントの重要性やポイントについて解説しました。今回はネットワークアセスメント実施後、GIGAスクール構想第1期で整備したネットワークの改善・再整備を失敗しないために必要となる確認事項について説明します。
本記事をご覧いただいているという事は、ネットワーク環境に何かしらの問題があり改善や再整備などを検討されているのではないかと思います。当たり前の事にはなりますがネットワーク環境の改善・再整備を失敗しないためには、この問題の原因を正確に把握し対応する事が非常に重要になりますので、その事について説明します。
2.ネットワーク環境の現状と問題点の把握
「ネットワークの速度が遅い」「インターネットに繋がらない」「Wi-Fiの接続が不安定」などの問題が発生している事が分かっていても、その問題の原因を正しく特定出来ていなければ、それらの問題を解決する事はできません。そのため、ネットワークアセスメントの実施は非常に重要です。
適切にアセスメントが実施されていれば、ほとんどの問題点の原因を把握出来ると思いますので、その調査結果を元に改善・再整備の検討を行う事になります。
もし、ネットワークアセスメントが未実施という事であれば、GIGAスクール構想特集①「GIGAスクール構想の実態とは?」の記事をご覧いただき、まずネットワークアセスメントを実施されることを推奨します。
未実施の理由が「予算が少なく実施できてない」というような場合でも、予算の範囲で実施する方法を検討できる可能性があるため、そのような場合は当社にご相談に頂ければと思います。
3.ネットワーク環境改善・再整備の準備
GIGAスクール構想でネットワークを整備するための仕様書は、「GIGAスクール構想の実現 標準仕様書(令和2年3月3日)」と「GIGAスクール構想の実現標準仕様書 学校からのインターネット接続編(令和3年1月7日)」の2つしかありません。ほとんどの教育委員会はこの2つの仕様書を参考にネットワーク環境の整備を行われたのではないかと思います。
GIGAスクール構想第2期でのネットワーク環境改善・再整備のための仕様書は準備されていないため、GIGAスクール構想第1期の整備の時の仕様書の内容を確認しネットワークアセスメントの結果から、仕様書の修正を行う必要があります。
また、令和7年度までは、ネットワーク環境改善、再整備に係る費用について補助金の予算が計上されていますので、併せて必要となる予算の検討と使用する補助金の確認も始めて頂くことになります。
4.ネットワーク環境改善・再整備の仕様検討
再整備を行う上で最も重要な事は「授業で児童生徒がストレスなく端末を使用できるネットワーク環境の整備」です。そのために、どこのような事に注意しネットワーク環境再構築の仕様書を作成しなければならないかを考える必要があります。
ネットワークアセスメントが適切に実施されているのであれば、その問題点を解決出来るように仕様書の修正を行います。そして、ネットワークアセスメントで実施した項目の中から、ネットワーク環境が適切に動作している事を確認するためのテスト仕様についても追記が必要となります。
ネットワーク環境の再構築までであれば、ここまでで十分なのですが「授業で児童生徒がストレスなく端末を使用できるネットワーク環境の整備」を実現するためには、運用保守の部分についても検討を行っておく必要があります。それは、環境の運用保守がスムーズに実施できることも必要不可欠だからです。
このことに気づかないまま整備をしてしまうと、「障害が発生した場合の対応に時間がかかる」「運用保守の費用が高額になる」などの問題が発生してしまい端末の活用に支障が出てしまうだけでなく、障害発生時の対応が必要となるため教職員の業務負担も増えてしまいます。
しかし、仕様書の作成には専門知識が必要で、時間もかかるため、教育員会の担当者の方が、アセスメント結果を元に仕様書を作成するだけでも、大変な思いをされているのではないでしょうか。そのような状況のなか運用保守など、その他の様々なことについても考慮しながらネットワーク環境整備の仕様書を作成する事は非常に難しいと思います。
「適切な仕様が分からない」「アセスメント結果を元に何をすればよいか分からない」というような事がある場合には、専門家への相談も検討されるとよいと思います。
5.ネットワーク環境改善・再整備に使える補助金
ネットワーク環境の問題の原因が分かり、適切な仕様書を作成出来たとしても費用が準備できなければ再整備を行う事はできませんので、補助金を使う事で再整備にかかる自治体の負担を減らす方法について説明します。
令和7年4月以降に、令和6年度補正予算(案)の「GIGAスクール構想支援体制整備事業の(1)学校の通信ネットワーク速度の改善①、②」と、令和7年度概算要求の「公立学校施設の整備」の2つの補助金をネットワーク環境の再整備に使える可能性があります。
出典:「文部科学省 令和6年度文部科学省関係補正予算事業別資料集 」
1つ目の「GIGAスクール構想支援体制整備事業の(1)学校の通信ネットワーク速度の改善①、②」については、GIGAスクール構想第1期で整備したネットワーク環境の改善を行う事で、対応出来る場合に使用する事になると思います。
2つ目の令和7年度概算要求の「公立学校施設の整備」の補助金については、GIGAスクール構想第1期のネットワーク環境整備の際に新たにLAN配線を行わずLTEで整備されている場合や既存のネットワーク環境を使用しGIGA環境を整備されている場合に検討されると良いと思います。
例えば、GIGAスクール構想第1期以前に整備された既存のネットワークを再整備するという形で、校務系と学習系のネットワーク環境を統合して使用できるように適切に設計する事ができれば、この補助金を使用して再整備を行うことが出来ると考えています。
ただし、この場合はGIGAスクール構想で整備した学習系ネットワーク環境だけでなく校務系ネットワーク環境に関する事も把握した上で仕様を検討する必要があります。このような形で整備を行う場合の標準仕様書が提供されていないため、専門的な知見が必要不可欠になりますので、専門家への相談を推奨します。
6.まとめ
今回は「授業で児童生徒がストレスなく端末を使用できるネットワーク環境の整備」を実現するために必要な土台となるネットワーク環境の改善・再整備について説明しました。
実際には、この仕様検討と並行して端末環境、セキュリティ環境などの仕様も検討しておくことで、「学校現場に求められるICT環境」と「運用保守に求められるICT環境」の両立が可能となり、よりよい環境を整備する事ができます。
適切な仕様書を作ることが出来れば環境構築、運用保守のコストを抑えることができ、教育委員会の費用の負担を抑える事ができるため、適切な教育ICT環境の継続にもつながります。
このように、ネットワーク環境整備の事だけを考えるのではなく、小学校1年生から中学校3年生の9年間、教職員や児童生徒が継続して端末を快適に活用できる環境を整備し継続していくためには「何が必要なのか」という事を考えて頂く事で、適切な環境を構築していただけるのではないかと思います。
このような事について、次回の「GIGAスクール構想環境の一元管理によるコスト削減と効率化」の中で詳しく解説しますので、参考にしていただければと思います。
GIGAスクール構想で整備したネットワーク環境の改善・再整備についてお困りのことがあれば、IT調達ナビを運営するGPTechまでお気軽にご相談ください。