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サーバーとPCの違いとは?「役割」と「構成」から基本をわかりやすく解説

業務の中でITに関わっていると、「サーバー」「PC」といった言葉に日常的に触れることになります。

一方で、「サーバーとPCの違いを説明してください」と改めて聞かれると、なんとなくのイメージは持っていても、はっきりと言語化するのは難しいと感じる方も少なくありません。

例えば、サーバーを「スペックの高いPC」といった曖昧な理解のままにしておくと、システムや業務について話す際の前提が人によってばらつき、担当者同士の認識のズレやベンダーとの行き違いを招くおそれがあります。

本記事では、サーバーとPCの違いを正確に理解するための一助として、「役割」と「構成」に分けて整理したうえで、メモリとストレージの違いなどの関連する基礎用語についてもあわせて解説します。

サーバーとPCの基本:「役割」で定義する違い

どちらも構造は同じ「コンピューター」である

まず前提として押さえておきたいのは、サーバーもPCも、どちらも広い意味では同じ「コンピューター」だということです。

どちらもCPUやメモリ、ストレージといったハードウェアの上で、OSや各種ソフトウェアが動作するという基本構造は共通しています。

一方で、業務の場面ではサーバーとPCをはっきり区別して呼び分けています。

これは見た目や部品の違いだけで分けているわけではなく、「そのコンピューターにどのような役割を持たせているか」によって名称を使い分けているからです。

この点が曖昧なままだと、サーバーに対して「専門の人だけが触る特別な機械」「自分が関わるには難しすぎるもの」といったイメージを持ってしまい、必要以上に距離を置いてしまうことがあります。

「サーバーのことはよく分からないので、できれば触れたくない」
「サーバーについては情シスやベンダーに任せておけばよく、自分はあまり理解しなくてもよいのではないか」

このような感想を持ってしまいがちですが、実際にはサーバーもPCも中身としては同じコンピューターであり、「何をさせている機械なのか」という役割づけが違うにすぎません。

サーバーもコンピューターであり、PCと比較して極めて特殊な構造で動いているわけではない、というイメージを持っておくことが大切です。

例えば、庁内や社内に次のような2台の機器があるとします。

・職員がメールや文書作成に日常的に使っている事務用PC
・グループウェアや業務システムが稼働しているサーバー機

どちらも「CPUやメモリ、ストレージが入ったコンピューター」であり、外観だけを見ると大きさや形が違う程度に見えるかもしれません。

しかし役割に注目すると、前者は職員が目の前の画面を操作して作業するためのPCであり、後者は職員全員がネットワーク越しに利用するシステムを止めずに提供し続けるためのサーバーです。

このように、「何でできているか」よりも「誰に対して何をしている機器なのか」という視点で見たときに、サーバーとPCの違いがはっきりしてきます。

続いて、サーバーとPCの役割の違いについて、「サービスを提供する側なのか」「サービスを利用する側なのか」という切り口で整理していきます。

サービスを「提供する側」か「利用する側」か

サーバーとPCの「役割の違い」を整理するうえでは、「サービスを提供する側か」「サービスを利用する側か」という切り口で考えると分かりやすくなります。

役割の違いに着目すると、サーバーはネットワークを通じて他のコンピューターに機能やデータを提供するコンピューター、PCはその機能やデータを利用者が操作するためのコンピューターと整理することができます。

1.業務システムの例で考える

例えば、勤怠管理システムを例にすると次のような関係になります。

・職員が画面を開いて出退勤を入力しているのはPC
・入力された勤怠データを保存し、集計や各種帳票出力の処理を行っているのがサーバー

このとき、PCは「勤怠管理システムというサービスを利用する側」、サーバーは「勤怠管理システムというサービスを提供する側」として位置づけることができます。

どちらもコンピューターであることには変わりませんが、「誰に対して何を提供しているのか」を整理することで、役割の違いが見えやすくなります。

2.ファイル共有の例で考える

ファイル共有でも同じような関係が見られます。

・職員が文書ファイルを開いて編集しているのは職員のPC
・文書ファイルそのものを保存し、庁内ネットワーク経由で参照できるようにしているのがファイルサーバー

この場合も、PCは「ファイル共有サービスを利用する側」、ファイルサーバーは「共有されたファイルを保管し、必要なときに提供する側」として振る舞っています。

3.「違いが分からないから変えられない」状態を避けるために

このように具体的な業務シーンに当てはめてみると、「どちらがサービスを提供するコンピューターで、どちらがそれを利用するコンピューターなのか」を意識しておくことの重要性が見えてきます。

サーバーとPCの何が違うのかを理解していないと、現場では次のような状況が生まれがちです。

・サーバーの更新や設定変更が必要だと分かっていても、「何が起きるか分からない」という不安から、手を付けられずに先送りしてしまう
・サーバーの役割や影響範囲がイメージできず、「とりあえず現状のままにしておく」ことが続き、結果として業務やセキュリティ面でのリスクが高まってしまう

こうした「よく分からないから触れない」「変えたいが変えられない」という状態から抜け出すためには、サーバーとPCの役割の違いを理解し、対応する必要があります。

OSを軸に見たサーバーとPCの違い

ここまでお伝えした通り、サーバーとPCには「サービスを提供する側」と「サービスを利用する側」という役割の違いがあります。

この違いは、単にハードウェアの性能だけでなく、その上で動くOS(オペレーティングシステム)の設計や使われ方にも表れます。

OSは、コンピューター上で動くアプリケーションを支え、CPUやメモリ、ストレージ、ネットワークといったリソースを管理する土台のソフトウェアです。

サーバーもPCもOSの上で動作しますが、「どのような場面で使われることを想定しているか」によって、求められる性質が異なります。

1.サーバー向けOSとPC向けOSの違い

サーバー向けのOSは、主に次のような利用を想定して設計されています。

・複数の利用者やシステムからの同時アクセスを前提としている
・24時間365日の連続稼働を前提とし、安定性や障害時の復旧性が重視される
・画面を見ながら操作することよりも、遠隔からの管理や自動化された運用が重視される

一方、PC向けのOSは次のような利用イメージを前提にしています。

・1人の利用者が目の前の画面を見ながら操作することを前提としている
・文書作成やメール、Web閲覧といった日常的な業務アプリケーションを、直感的に操作できる画面表示やUI(ユーザーインターフェース)が重視される

どちらもOSであることに違いはありませんが、「多くの利用者にサービスを提供すること」を重視しているか、「個々の利用者が使いやすいこと」を重視しているか、という点で設計思想が分かれています。

2.業務の中での使われ方と運用の違い

実際の業務に当てはめてみると、OSの違いは「どのように使われるか」「どのように運用されるか」にも影響します。

・職員のPC向けOS

デスクトップ画面が表示され、利用者がアプリケーションを起動したり、ファイルを開いたりする前提で設計されています。

更新や再起動も、利用者の業務状況を見ながら、各人や部署単位で比較的柔軟に行われることが多くなります。

・サーバー向けOS

職員が直接画面を見て日常的に操作することは少なく、多くの場合はサーバールームなどに設置され、キーボードや画面が常に接続されていないこともあります。

設定変更やメンテナンスは、管理者がリモートデスクトップや専用の管理ツールを用いて遠隔から接続し、あらかじめ決めたメンテナンス時間帯にまとめて実施するといった運用が一般的です。

更新や再起動の際には、システムを利用する部門への事前連絡や、サービス停止時間の調整などもあわせて行う必要があります。

このような背景もあり、現場ではサーバーに対して「専門の担当者だけが触るべきもの」「自分が操作すると何が起きるか分からないので、極力触れない方がよいもの」といったイメージを持たれることが少なくありません。

その結果、必要な更新や設定変更の重要性は理解していても、「サーバーはよく分からないから」「万が一止めてしまうと怖いから」といった理由から、対応が先送りになってしまうケースも見られます。

サーバー向けOSとPC向けOSの違いを大まかにでも理解しておくことは、こうした「よく分からないから触れない」状態から一歩抜け出すうえで有効です。

サーバーもPCも同じコンピューターでありながら、OSとしてどのような前提で設計され、どのような運用が求められているのかを知ることで、「何をしてよくて、何をするとリスクがあるのか」の輪郭がつかみやすくなります。

こうしたOSの位置づけや運用の違いは、メモリやストレージ、CPUといったハードウェアの構成にも直結します。

次の章では、サーバーとPCの役割の違いが、具体的にどのようなハードウェア構成の違いとして表れているのかをお伝えします。

ハードウェア構成から見るサーバーとPCの違い

メモリは「作業机」、ストレージは「本棚」

サーバーとPCの「中身」を理解するうえで、まず押さえておきたいのがメモリとストレージの役割の違いです。

どちらもデータを扱う部品ですが、「どのくらいの時間」「どのような目的で」データを覚えておくのかが異なります。

1.メモリは「今この瞬間の作業領域」

メモリは、コンピューターが「今まさに行っている作業」のために使う領域です。

アプリケーションを起動したり、ファイルを開いて編集したりするとき、その処理に必要なデータが一時的にメモリに読み込まれます。

メモリの特徴として、次のような点が挙げられます。

・電源が入っているあいだだけデータを保持する(一時的な記憶)
・高速に読み書きできるため、処理のスピードに直結する
・同時に多くの処理を行うほど、より多くのメモリ容量が必要になる

イメージとしては、「作業机の広さ」に例えることができます。

机が狭いと、一度に広げられる資料が限られ、作業のたびに片づけたり取り出したりする必要があります。

机が広ければ、必要な資料を一度に広げておくことができ、作業をスムーズに進められます。

コンピューターのメモリもこれと同じで、容量が不足していると「一度に広げておけるデータや処理」が限られ、動作が重くなったり、切り替えに時間がかかったりします。

2.ストレージは「長期間の保管庫」

一方、ストレージはデータを長期間保管しておくための領域です。

OSやアプリケーション自体、業務データ、ログ情報などは、ストレージに保存されています。

ストレージの特徴としては、次のような点があります。

・電源を切ってもデータが残り続ける(長期的な記憶)
・たくさんのデータを蓄積しておくことができる
・性能だけでなく、「消えにくさ」や「壊れにくさ」も重要になる

こちらは、「本棚や書庫」にたとえるとイメージしやすくなります。

本棚に資料をしまっておけば、電気を消して帰宅しても、翌日また同じ資料を取り出して使うことができます。

ストレージも同様に、コンピューターの電源を落としても、次に起動したときに同じデータを読み出すことができます。

サーバーとPCそれぞれで重視されるスペックのポイント

サーバーとPCを比較すると、メモリとストレージに求められるポイントにも違いが出てきます。

・サーバー

多くの利用者やシステムからの同時アクセスを処理する必要があるため、一定以上のメモリ容量が求められます。

また、業務データを安全に保管し続ける必要があるため、ストレージについても容量だけでなく、障害時にデータを守る仕組みが重視されます。

・PC

個々の利用者が快適にアプリケーションを使えることが重要なため、メモリは「日常業務で使うアプリがストレスなく動くか」が目安になります。

ストレージについては、職員が扱うファイルの量や、ローカルにどこまで保存するかといった運用方針に応じて必要な容量が変わってきます。

このように、メモリとストレージはいずれもコンピューターに不可欠な部品ですが、「今の作業を支える一時的な領域」と「情報を蓄積しておく長期的な領域」という役割の違いがあります。

クラウド環境におけるサーバーとPCの関係性

近年は、庁舎内や社内に物理的なサーバー機を設置せず、クラウドサービスを利用して業務システムを構築・運用するケースが増えています。

クラウドとオンプレミスの特徴や両者の位置づけについては、別記事「クラウドとオンプレミスとは?両者を組み合わせる場合もあわせて解説!」で詳しく整理していますので、ぜひご一読ください。

本記事では、サーバーとPCの違いという観点に絞り、クラウド環境を利用する場合であっても「サービスを提供する側のコンピューター」と「サービスを利用する側のコンピューター」がどのような関係になっているかを整理します。

オンプレミスとクラウドで変わる管理の境界線

まず、「サーバーがどこに設置され、誰が管理しているのか」という視点で整理してみます。

・オンプレミス(自庁設置・自社設置)の場合
– 庁舎内や自社のサーバールームに物理サーバーを設置する
– ハードウェアの調達・設置・保守、OSの管理などを、自庁または委託先が担う

・クラウドの場合
– クラウド事業者のデータセンター内にサーバーが設置されている
– 物理サーバーの管理や、場合によってはOSの管理もクラウド事業者側が担う

利用者のPCから見ると、どちらの場合も「ネットワーク越しに業務システムにアクセスしている」という体験自体は大きく変わりませんが、その裏側には必ずサービスを提供するサーバーが存在しています。

クラウドでも変わらない「提供側」と「利用側」の構造

具体例で見てみましょう。

・クラウド型の勤怠管理サービスを利用している場合
– 職員がブラウザで勤怠画面を開いて打刻しているのは、これまでと同じく職員のPC
– その背後で勤怠データを保存し、集計や帳票出力を行っているのは、クラウド事業者側のサーバー

・オンラインストレージサービスを利用している場合
– 職員がファイルをアップロード・ダウンロードしているのはPC
– ファイルそのものを保存し、世界中のどこからでもアクセスできるようにしているのは、クラウド事業者側のサーバー

このように、クラウドを利用していても、PCは「サービスを利用する側」、サーバーは「サービスを提供する側」という関係は変わりません。

違うのは、サーバーを自分たちで直接管理しているか、クラウド事業者に委ねているかという点です。

サーバーが見えにくくなることによるコスト・スペックのリスク

クラウド環境では、物理サーバーやサーバー向けOSを直接目にする機会が少ない分、次のようなギャップが生まれることがあります。

  • 余裕を持ったスペックで構成したまま見直しを行わず、実際の利用状況に比べて過剰なリソースを維持し続けてしまう
  • 負荷や利用者数の変化に応じたチューニングを行わないまま運用を続けてしまい、気づかないうちに不要なコストを払い続けてしまう

クラウド上であっても、CPUやメモリ、ストレージ、ネットワーク帯域といったサーバー側のリソースは確実に消費されています。

利用者がどの程度の負荷やデータ量を想定しているかによって、必要となるサーバー構成や料金も変わってきます。

このとき、サーバーをブラックボックスのまま「なんとなく不安だから多めにしておく」「最初に決めた構成のまま変えない」といった判断を続けてしまうと、適切なコスト水準から外れた状態で運用を続けてしまう状況に陥りがちです。

その意味でも、「サーバーとPCの役割の違い」や「サーバー向けOSとPC向けOSの違い」とあわせて、サーバーリソースがどのような要素(CPU・メモリ・ストレージ・ネットワーク帯域など)から構成されているのかを、あらかじめ押さえておくことが重要です。

こうした前提を共有しておくことで、クラウドを前提としたシステム検討においても、性能とコストのバランスをとった議論が可能となります。

まとめ

比較項目 サーバー (Server) パソコン (PC)
基本的な役割
サービスを提供する側
他のコンピューター(PC)からの要求に応答する
サービスを利用する側
人間が画面を操作し、サービスを受ける
主な利用者
多数の利用者・システム
複数のアクセスを同時に処理することを想定
特定の個人(1人)
目の前の利用者が快適に使えることを想定
OSの設計思想
安定性と管理性
24時間365日の連続稼働や、遠隔管理を重視
使いやすさ(UI)
直感的な画面操作やアプリの使い勝手を重視
ハードウェア
(メモリ等)
大容量・信頼性重視
多くの処理を同時に捌くため、広い作業領域が必要
快適さ重視
日常業務のアプリがストレスなく動く性能が必要

本記事では、「サーバーとPCはいずれもコンピューターである」という前提に立ちつつ、「サービスを提供する側/利用する側」という役割の違いと、OS・メモリ・ストレージといった構成要素の違いを解説しました。

あわせて、クラウド環境であってもその裏側には必ずサーバーが存在し、CPUやメモリ、ストレージ、ネットワーク帯域といったリソースが消費されていること、そしてその前提を踏まえて性能とコストのバランスを考える必要があることについてもお伝えしました。

本記事でお伝えした内容を知識として持つことで、冒頭で触れた「サーバーとPCの違いを説明してください」という問いに対しても、単なるイメージではなく役割と構成の両面から違いを正確に捉えることができるようになります。

近年は業務とITは切っても切り離せない関係にあるため、身近なサーバーやPCについての理解を深めることは業務効率を高める上で非常に重要な要素です。

最後になりますが、本記事の内容も参考にサーバーやPCなど、さまざまなITに関する理解を深めていただければ幸いです。

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この記事の編集者

錦戸 優輝

錦戸 優輝

約10年自治体の情報システム部門の職員としての経験があり、三層分離やマイナンバー制度開始時の対応など様々な業務に携わってきた。自治体退職後は民間企業のSIerでクラウドサービスを運用するSEとして勤務し、その後IT調達ナビの運営会社である(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに中途入社。ITコンサルティング業務に従事しつつ、IT調達ナビでシステム発注に役立つ記事を展開するメディア運営業務にも携わる。応用情報技術者。

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