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業務改善の第一歩となるヒアリングと業務フロー作成のポイント

本記事では、業務のヒアリングや業務フローの作成を担当することになった方へ向けて、それぞれの用語の説明と、重要なポイントを解説します。

「業務ヒアリング」や「業務フロー」という言葉は聞いたことがある方は多いかもしれませんが、自らが実際に担当した経験はなく、実施する際に注意すべきポイントまでは分からないという方がいると思います。

一方で、業務フローを作成して業務を見える形にするということは、業務改善における第一歩として、非常に重要なプロセスの1つでもあります。
本記事で解説している重要なポイントを明確に意識することで、業務ヒアリングと業務フローの目的を達成でき、その後の業務改善の成功に大きく近づくことができます。

※本記事は、グローバル・パートナーズ・テクノロジーのブログに掲載されている「業務理解を深めるヒアリングのコツと業務フロー作成のポイント【初級者編】」の記事をリライトしたものです。

 

業務ヒアリングの方法とポイント

「業務ヒアリング」とは、把握したい対象業務に携わる関係者に、業務の内容や課題について聞き取ることです。

業務マニュアルなどがなく、把握したい現状の業務を表す十分な既存資料がない場合に業務ヒアリングを実施します。文書などでの情報収集だけでは把握できない、現状業務の詳細や生じている課題を業務の担当者に確認します。

特に、新システムを導入する際には、システムを導入する範囲の業務を可視化する現状分析から始まることが基本です。現状の業務についてヒアリングすると同時に、システム導入後の業務も想定した質問もできるとよいでしょう。

業務分析を実施する際の全体の大まかな流れは、

「①事前調査・準備」→「②ヒアリング実施」→「③内容整理」となります。
本記事では、「①事前調査・準備」~「②ヒアリング実施」を「業務ヒアリング」の章で、また、「③内容整理」は「業務フロー」の章でポイントを説明します。

 

①ヒアリング成果を左右する事前準備

有名なことわざに、「段取り八分仕事二分」というものがあります。これは、事前準備が成果の8割を占めるというものです。

事前準備を十分に行わなければ、ヒアリングの場で思いつきの質問や目的が不明瞭な質問を繰り返すことになります。これでは、質問者と回答者の時間を不必要に取ってしまい、ヒアリングの目的も達成できません。
事前に質問者側で十分に準備し、ヒアリングの場では必要な項目のみに絞って質問することで、ヒアリング全体の時間対効果を高めることができます。

事前準備の大まかな流れは「業務の流れを既存文書等で調査する」→「業務や課題の仮説を立てる」→「質問を洗い出す」となります。

まずは、対象業務に関連する既存文書があれば事前に受領し確認しておきます。また、業務によってはインターネット上で業務の流れを把握できるものもあります。既存文書の読み込みや調査を踏まえ、ヒアリング対象業務を可能な限り詳細にイメージします。

次に、事前調査でも不明瞭な業務の流れや、発生していそうな課題について仮説を立てます。

最後に、ヒアリング時に業務担当者に直接質問するべき事項を洗い出します。

以上の流れで洗い出した事項をヒアリングの場で質問することによって、業務や課題に対する質問者の仮説と、回答者が認識している現状業務について、認識をすり合わせていきます。
これによって、ヒアリングの時間対効果を最大限に高めることができます。

 

②ヒアリング内容の理解を深める「再定義」

「再定義」とは、ヒアリングで聞き出した内容について、質問者が認識した内容で繰り返すことです。質問者と回答者の認識の齟齬を防ぐことが目的です。

ヒアリングで意識するべきことの一つに、「自分が相手の発言を正確に理解できているかの確認(相手の意図と自分の認識が一致しているか)」があります。

例えば、業務上の処理の一つである「文書を確認する」という言葉の背景に考えられる意味を挙げると、

  • 文書が存在することを確認する
  • 文書の内容を読み、修正点があるかを確認する
  • すでに修正が終わっている文書を改めて確認する

というように、業務プロセスによって様々なパターンが考えられます。

もし「相手の発言の意図」と「自分の認識」にずれがあった場合、不一致の確認を怠ったままヒアリングを終えてしまうと、互いに気付かずに認識の齟齬が生まれ、誤った業務理解、業務分析につながります。

そのような認識の齟齬を防ぐために、質問者は、相手の回答に対し、「それはつまり〇〇ということですか?」とヒアリング対象者に問いかけをし、「再定義」することが大切です。

 

業務フローの作成方法とポイント

業務フローは、業務における判断や処理の流れ、関係者間のやりとりを図式化したものです。対象業務に関わる担当者へのヒアリングによって業務を理解し、得た情報をもとに業務フローを作成します。

業務フローには、業務における各処理の流れや関係者間のやりとりのほか、データの流れやシステムへの入出力、出力される書類などが記載されます。

業務フローを作成する目的は、既存文書やヒアリングで入手した情報をもとに対象の業務を可視化することで、業務の課題やあるべき姿を整理することです。

 

③業務フローのポイントは「正確さ+分かりやすさ」

業務フローを作成する際のコツは、正確さと分かりやすさを意識することです。業務フローを作成する上で悩ましい点が、「業務フローにおける一つ一つの処理をどれだけ細かく/粗く分けて記述するか」というものです。

細かい粒度で図式化する場合、業務の内容を正確に把握することが可能です。しかし、内容が複雑になるため、課題を整理する際に必要以上に時間がかかってしまいます。
一方で、粗い粒度で図式化する場合、分かりやすさは向上しますが、業務の流れをつぶさに把握することが難しく、課題を見落としてしまう可能性があります。

このように、それぞれにメリット、デメリットがあるため、記述の粒度に絶対的な正解はありません。(ただし、目安の一つとして「業務に関わっていない第三者が見て理解できるかどうか」という基準があります。)

絶対的な正解がないからこそ、業務フローの目的をその都度考え、ケースによって柔軟に対応することが大切です。

なお、記述の粒度を調整する以外にも、分かりやすさが向上する方法があります。例えば、同じ処理の流れが複数で発生した場合、共通している部分を別ページに集約して参照させることで、冗長性が解消され読みやすさが向上します。

また、箱(一つの処理を図にしたもの)の間隔をそろえる、矢印の交差をできる限り避けるといった体裁に気を付けることも、分かりやすさを向上させる上で重要な要素です。

 

まとめ

今回の記事では、業務ヒアリングと業務フローの概要、重要なポイントについて解説しました。業務ヒアリングと業務フローの作成は、大きな労力が必要なプロセスではありますが、業務改善のためには避けては通れません。記事で説明したヒアリングの事前準備や再定義、業務フローの正確さとわかりやすさといったポイントを意識することで、このプロセスを成功させ、以降のプロセスに大きく貢献することができます。

 

この記事の編集者

武田 祥太郎

武田 祥太郎

大学時代法学部で労働基準法の研究を進める中で日本の労働生産に課題を感じ、ITによる企業体質の健全化を目指して(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 民間企業のITガバナンス、マネジメント支援業務に従事し、同社のナレッジ活用知見を活かしてIT調達ナビで記事の展開にも携わる。

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