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プロジェクトを成功に導く「RFP」の極意―記載すべき内容やポイントを解説―|開催レポート

はじめに

2025年2月17日、株式会社グローバルパートナーズテクノロジー(GPTech)主催のセミナー「RFPの極意」が開催されました。

本セミナーでは、数多くのITプロジェクトの支援実績を持つGPTechのコンサルタント小堀が登壇し、効果的なRFP(提案依頼書)を作成するために、製品およびベンダー選定時に必ず明確化すべきポイントを解説しました。

本記事では、セミナーの内容を抜粋してまとめ、RFP作成の重要なポイントを明らかにします。

GPTech事業紹介

GPTechは「ユーザー企業の価値追求」を行動原理とする独自のビジネスモデルを展開しています。

ステム会社との利害関係を持たず、ユーザー企業とのみパートナーシップ契約を結ぶことで、ユーザー企業の発注体制強化を最優先事項としています。

GPTechの事業コンセプト

ERPの選定プロセス(概要)

ERPの選定プロセスは複数のステップで構成されており、適切なプロセスを踏むことで失敗リスクを軽減し、選定の精度を高めることができます。

プロセスは以下の順序で進行します:

要求定義:システム導入において「やりたいこと」を明確にする段階

RFI作成:情報提供依頼書を作成し、各ベンダーから基本情報を収集

RFP作成:提案依頼書を作成し、詳細な要求を伝える

製品・ベンダー選定:複数の提案から最適なものを選定

 

選定後は、要件定義、実装、テスト、移行、本番稼働、そして運用保守というステップに進みます。ERPは購入してそのまま使えるものではなく、会計期間設定や勘定科目設定など、多岐にわたる設定が必要です。

RFP作成前の準備として重要なのが「要求定義」です。

これは単なる「あったらいいな」という要望ではなく、本当に必要な要求を明確にするプロセスです。

情報収集、分類・優先順位付け、見える化という3つのステップで進めます。

また、RFIはRequest for Informationの略で、詳細な情報収集のために各ベンダーに問い合わせるものです。

これにより、より深く検討する価値のあるERPかどうかを判断します。

RFPとは

RFP(Request for Proposal)は「提案依頼書」のことです。

一般的には提案書を受け取ることやシステムベンダーを選定することが目的と思われがちですが、その真の目的は「システム導入の目的を達成すること」にあります。

RFPの適切な作成によって実現すべき重要な点は以下の4つです:

  1. 要求(やりたいこと)をベンダーに適切に伝える
  2. 適切な提案をベンダーから受ける
  3. 複数のベンダーからの提案を比較評価しやすくする
  4. 目的達成のために適切な条件で契約を取り交わす

RFPは大きく分けて「提案依頼要領」と「調達仕様書」の2つの文書で構成されます。前者は手続きに関する文書、後者は求めることや要求を記載した文書です。

契約までの流れとしては、RFP作成後にベンダーへの説明と質疑応答を行い、提案書を受領、評価し、契約締結に至ります。

この際、提案書作成はベンダーにとって大きな負担となるため、「協力していただく」という謙虚な姿勢を持つことが重要です。

RFPに記載すべき内容

提案依頼要領(手続き)

提案依頼要領は本文と補足分の2つで構成されます。

本文に記載すべき内容

  • 提案の手続きに関する案内(質疑応答方法、回答期限、提出場所、問い合わせ先など)
  • ベンダー選定の方針(評価基準の明示)
  • 事業者決定の目安時期
  • 秘密保持、費用負担、資料取り扱いに関する注意点

補足分に記載すべき内容

  • 提案書の形式(PowerPoint、Word、PDFなど)
  • 納品物(提案書、機能要求への回答など)
  • 記載してほしい事項(エグゼクティブサマリー、実行計画、契約条件など)

提案依頼要領のサンプル:

調達仕様書(求めること)

調達仕様書は以下の5つの項目で構成されます:

  1. 背景と目的:プロジェクトの土台となる重要な部分
  2. システムの要件:必要な機能やシステム要件
  3. 委託内容と成果物:委託内容と求める成果物
  4. 体制要件:プロジェクト推進体制
  5. その他所条件:契約に関する事項など

特に重要なのが「背景と目的」です。

発注者が細部まで完璧な要求を伝えることは難しいため、目的や背景を明確に伝えることでベンダーから目的達成に必要な提案を引き出すことができます。

また、目的を明示しておくことで、万一プロジェクトが頓挫した場合にもベンダーに対して契約不適合責任を問うことができる可能性があります。

調達目的の記入例:

RFP作成にあたり気をつけるべきポイント

提案依頼の心得、作成時に気をつけること、遂行時に気をつけることの3つの観点から解説します。

提案依頼の心得

①ベンダーから選ばれる立場であることを意識する

相手の利益を無視したような内容を提示してしまうと、力のあるベンダーほど早々に辞退してしまう可能性があります。

②目的や要求が妥当かどうかを常に確認すること

実現性を無視した目的や要求を記載しないこと、つまり「それは無理だろう」という内容を盛り込まないようにしましょう。

ベンダーの立場を無視した要求は避けるべきです。

③スケジュールと契約条件が妥当かどうかを確認すること

不可能なスケジュールを要求しないことが重要です。

例えば、通常1年かかるようなプロジェクトを「3ヶ月で必ず達成してください」といったスケジュールは妥当ではありません。

また、契約条件に関しても、自社が不利にならないようにすることは大切ですが、一方的な契約条件を提示することは避けるべきです。

お客様意識ではなく、ベンダーを目的達成のためのパートナーとして尊重することが重要です。

システムは導入して終わりではなく、長く使い続けるものなので、長期的なWin-Winの関係を築くことが大切です。

RFP作成時に気をつけること

①網羅的に記載する

特に、ERPなどのパッケージ製品は、対応できることとできないことが存在します。

選定後に「対応できません」という事態を避けるため、一定以上の要求を網羅した調達仕様を作成することが重要です。

項目漏れが発生すると、思うような調達ができない可能性があるため、弊社のフォーマットをご利用いただき、必要事項を書き漏らさないようにしてください。

②具体的に記載する

これはベンダーとの共通認識を形成するために非常に重要です。

自社だけで理解できる曖昧な表現は避け、誰が見ても理解できるような具体的な表現を心がけましょう。

③将来も考慮する

現在の要件だけでなく、将来的にどのようなシステムにしたいのか、何年くらい利用したいのかといった視点も持ちながらRFPを作成することが重要です。

例えば、将来的に外部システムとの連携を考えているのであれば、その旨を記載しておく必要があります。

RFP遂行時に気をつけること

作成したRFPは、そのまま提出するのではなく、必ずレビューを実施するようにしましょう。

レビューの観点としては、以下の4点があります。

①目的は明確か

②機能要求は適切か

③非機能要求は明確か

④第三者に伝わる文書か

レビューは、RFPの作成者本人ではなく、第三者に行ってもらうことが重要です。

なぜなら、作成者は自分の主観でしか判断できず、見落としが発生しやすいからです。

プロジェクトに直接参加していない人や、内容をあまり理解していない人にレビューを依頼することで、客観性が担保されます。

レビューを行う際は、項目を埋めるためだけに形式的な目的を記載していないか、本当に必要な機能要求が必須になっているか、などを確認しましょう。

また、専門用語ばかりになっていないか、社外の人にも伝わる表現になっているかを確認することも重要です。

以上が、RFP作成において気をつけるべきポイントです。これらを意識してRFPを作成することで、より良い提案を引き出し、プロジェクトの成功に繋げることができるはずです。

質疑応答

Q1:提案依頼要領と調達仕様書を分けて書く必要はあるか?

A:必須ではありませんが、分けることには以下のメリットがあります:

まず説明がしやすいという点があります。

また、手続き部分は一度作成すれば大部分を使い回すことができます。

調達仕様書はプロジェクトごとに書き直す必要がありますが、手続き部分は微修正で済むので、管理上も作成上も便利になります。

そのため、分けておくとよいでしょう。

Q2:技術的知識が不足している場合、どこまで詳しく書けばよいか?

A:

技術的な知識がなくても心配しないでください。

実は技術的な知識があっても完璧な要求を作るのは難しいです。

まずは、やりたいことをできる限り具体的に書いてみてください。

そして、調達の目的もできるだけ詳しく記述しましょう。

自信がない部分については『この目的に合った提案をお願いします』という形でベンダーに委ねることもできます。

ただし、丸投げはNGです。

どうしても不安なら、弊社やその他専門家のサポートを受けるのも一つの方法です。

Q3:RFPを抜け漏れなく記載する方法は?

A:

一番手っ取り早いのは、弊社が作成したフォーマットを活用することです。

弊社のフォーマットはこれまでのノウハウや経験を盛り込んで作成したもので、抜け漏れを防ぐ構成になっています。

また、本サイトでもRFPの記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

 

機能要件など詳細については、このようなセミナーだけでは伝えきれない部分もあります。

もし可能であれば、実践的な演習形式の研修に参加されるとより理解が深まると思います。

フォーマットや研修に関心がございましたら、弊社までお気軽にご連絡ください。

まとめ

本セミナーでは、効果的なRFP(提案依頼書)作成の極意として、製品・ベンダー選定時に明確化すべきポイント、RFPの構成要素、そして作成・遂行時の注意点について解説しました。

特に重要となるのは、RFPの目的はシステム導入の成功にあることを認識し、調達の目的を明確に記載することです。

選定や導入は単なる通過点であり、RFPの真のゴールはシステム導入の目的達成です。

目的達成に向けては、単に必要な機能や委託内容を漏れなく書くだけに留まらず、ベンダーとの共通認識形成のために調達の目的を明確に伝えることが重要です。

ベンダーとの良好なパートナーシップを意識し、フォーマットを活用しながら客観的に伝わるRFPを作成することで、より質の高い提案を引き出すことができます。

RFPは企業のシステム投資における重要な橋渡し役であり、その質が提案の質を左右します。

本セミナーで解説した内容を参考に、効果的なRFPを作成し、システム導入プロジェクトを成功に導くことを願っています。

GPTechでは、今後もシステム導入に関する様々なテーマのセミナーを予定しています。

また、RFP作成や提案評価に関する無料相談会も随時受け付けておりますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

この記事の編集者

柳元 華奈

柳元 華奈

北京大学日中通訳専門修士卒。日本経済の活性化を目指し、日本のIT変革やアジアとの架け橋となるべく、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 主に民間企業のシステム刷新プロジェクトに従事し、同社のPR・マーケティング全般の業務やIT調達ナビの運営業務にも携わる。

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