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システム導入/刷新に向けた発注側のプロジェクト体制の作り方・メンバーの選び方を丁寧に解説!

 

本記事では、以下のような悩みを抱えた経営層やプロジェクトを立ち上げる立場にある方に向けて、「プロジェクトを進めるうえで必要な体制」について詳しく説明します。

  • システム導入/刷新のプロジェクトを立ち上げたいが、どのような体制を組めばいいのかわからない
  • システム導入/刷新のプロジェクトでは、どのような体制が効果的に機能するのかわからない
  • プロジェクト体制がプロジェクトの進行に大きく影響を与えることが体感的にわかっているが、どのような体制を組むのがよいかわからない

このような悩みを抱えた方に本記事を読んでいただくことで、システム導入/刷新プロジェクトにおいて、「システム発注側の企業がどのようにすれば適切なプロジェクト体制を構築することができるか」を理解していただけると思います。

まずはプロジェクト体制とはそもそも何なのか?というところから説明します。

1. プロジェクト体制とは

そもそも「プロジェクト体制」とは何でしょうか?

簡潔に表現するなら、「プロジェクトにおいて、誰が何をやるかの役割分担と責任範囲を明確にしたもの」ということができます。
プロジェクトを実行する際には、事前に「意思決定者」、「実務担当者」などそれぞれの役割を定義します。
あくまで一例ですが、実際にシステム導入/刷新プロジェクトにおける発注側企業のプロジェクト体制を示した図がこちらです。

プロジェクト体制図では、それぞれのプロジェクト関係者の役割、責任範囲が定義されていることがわかります。

実際のプロジェクトでは、このような体制図や役割一覧を作成し、役割分担と責任範囲が一目でわかるようにしておくことが重要です。プロジェクトによって体制図の作り方や記述方法は異なりますが、目的は常に「誰が何をやるかの役割分担と責任範囲を明確にする」ことです。

体制がいい加減に決められていると様々な問題を引き起こす可能性があります。次の章では、具体的にどのような問題が発生するのか説明します。

2. プロジェクト体制が曖昧な場合に発生する問題

プロジェクト体制が明確になっておらず曖昧なまま進めてしまうと、どのような問題が発生するのでしょうか。

2-1. コミュニケーションコストの増大

役割・責任範囲を明確にしないままプロジェクトを進めていった際に大きな問題になるのが、「コミュニケーション」の問題です。

例えば、「経営層が判断すべきこと」、「プロジェクトマネージャーが判断すべきこと」の線引きを明確にしないままプロジェクトを進めた場合を考えます。


線引きを明確にしていないと、意思決定が必要な場面ごとに、経営層に判断を仰ぐべきかどうか、毎回相談が必要になりコミュニケーションのコストがかかります。一回のコストは小さくても積み重なるとプロジェクト遅延の原因となります。


コミュニケーションのコストを低減しようとして、重要な論点について、経営層の判断を仰がずにプロジェクトマネージャーが独断で意思決定をしてしまうこともあります。
しばらく後に経営層からその判断に反対意見が出て、意思決定がくつがえるということが想定されます。その場合、スケジュールも大きく遅延しますし、信頼関係にも傷がついてしまいます。また、開発会社側の作業が変更になる場合は、追加費用が発生することも考えられます。

このような問題は、レイヤーが異なるプロジェクトマネージャーとプロジェクトメンバー等の関係性においても同様に発生する可能性があります。

コミュニケーションのコストが増大すると、結果としてプロジェクト遅延・費用増大の原因になってしまいかねません。
事前に役割・責任範囲の線引きが明確になっていれば、都度コミュニケーションをする必要がなく、円滑にプロジェクトを進めることができます。

2-2. 作業の抜け漏れ・重複の発生

役割・責任範囲を明確にしないまま、プロジェクトを進めていくと、作業の抜け漏れや重複も発生しやすくなります。

役割・責任が明確になっていないと、全員が「自分の仕事じゃない」と思い込んでいて、必要なタスクが宙に浮いてしまうということがあり得ます。

宙に浮いていて誰も手を付けていなかったタスクが、後続のタスクを行うための必須要件となっていた場合は、スケジュール遅延や費用の増大につながってしまいます。
プロジェクトメンバーの中には、通常業務をやりながらプロジェクトにも取り組んでいるというメンバーも少なくありません。そのような多忙なメンバーが、責任範囲が明確になっていない仕事を「誰かがやってくれるだろう」という心理になって任せてしまうのも無理からぬことかもしれません。

以上のことから、作業の抜け漏れ・重複を防ぐという観点でも役割・責任を明確にしておくことは非常に重要ということがわかっていただけるかと思います。

 では次にプロジェクト体制を適切に設計する方法について見ていきましょう。

3.プロジェクト体制を適切に設計する方法

3-1. 役割・責任範囲を明確にする

プロジェクト体制を検討する際に、まず大切なことは、「役割・責任範囲を明確に図示・言語化し、内容についてプロジェクトのステークホルダーと同意すること」です。

役割・責任範囲を明確にしないことの弊害をプロジェクトのステークホルダーに共有したうえで、重要性を認知してもらい、しっかりとした線引きを行いましょう。

役割・責任範囲の線引きをしっかりすることで、問題が発生した際の責任の切り分けを正確に実施することができ、再発防止策も考えやすくなります。

プロジェクト開始時の段階で、これらを言語化し共有するのは骨が折れる作業であるため、曖昧にしたまま開始してしまいがちですが、線引きが明確になるのが遅くなればなるほど、影響が大きくなるため、初期段階での決定が重要です。

初期段階では情報不足でプロジェクトを進めてみないとどうしても決められない部分がある場合は、どのような情報が揃った段階で改めて役割を決めるかを決めておくと、ずるずると曖昧なまま進行していくのを防げます。

図示・言語化した資料(体制図や役割一覧)はプロジェクトメンバーがいつでも参照できるようにしておくことが重要です。

プロジェクト計画書などに必ず記載するようにしてください。

体制図を書く際のポイント

  1. 曖昧な記載をしない
    責任者が明確になっていない、チームの役割が記載されていない記載は避け、各チームの役割とチーム責任者を誰にでもわかるようにします。
  2. 命令系統を複数にしない
    基本的に各役割に対する命令系統を複数にするのは避けます。ただし、一人で複数の役割を担う場合では、複数でも問題ありません。

 

3-2. 適切なメンバーをプロジェクトにアサインする

役割・責任範囲を明確にすることと同じくらい重要なのが、プロジェクトへ参画するメンバーを適切にアサインすることです。

なぜなら、役割・責任範囲が明確になっていても、適切なスキル・マインドを持ったメンバーがアサインされていなければ、当然プロジェクトの品質をあげることはできないからです。

また、プロジェクトメンバーのアサインは一度決めてしまうと後から変更するのは困難です。プロジェクトの途中でメンバーを入れ替えるとなると、役割やこれまでの経緯の引継ぎに多くの工数が必要になり、プロジェクトの運営が止まってしまいます。

そのため、プロジェクト開始前に適切なメンバーを選定することが非常に重要といえます。社内政治や、「最近は手が空いてそうだから」というような理由でメンバーを選定するのは避ける必要があります。

メンバーを検討する際に考慮すべき重要なことは以下の通りです。

 

プロジェクトへの部署・メンバーの関連度合い

体制をよく検討せずに決定するとプロジェクトの目的を実現するために必要な部署/メンバーがプロジェクト体制に含まれていないということが発生します。

例えば、システム導入/刷新のプロジェクトを情報システム課のメンバーが主導し、システム化対象の業務を行う業務部門のメンバーが体制に含まれない場合を考えます。

システムに必要な要件を整理するためには、現状把握をしたうえで、課題を抽出しシステムのあるべき姿を描く必要があります。
情報システム課のメンバーはITリテラシーが高い一方で、業務部門と比較すると、業務への理解は浅いため、業務部門のメンバーがいなければ、適切な現状把握や課題整理ができずシステムのあるべき姿も見当外れになってしまう可能性が高くなってしまいます。

それを解消するためには、業務部門の人材をプロジェクトメンバーに入れる、もしくは業務部門を経験したことのある人材をプロジェクトメンバーに入れる、というような対応が必要です。また、業務部門の中でも、システム導入/刷新に協力的であり、どのような課題があるかを把握している、業務部門の中での影響力の高いメンバーであればなおよしです。

上記は一例ですが、どの部署やメンバーを巻き込む必要があるかを考慮して体制を検討しましょう。

ITリテラシーのレベル

システム導入/刷新のプロジェクトの場合、プロジェクトメンバーのITリテラシーのレベルはアサインの重要な指標となります。ITリテラシーが高くない場合、知識不足からコミュニケーションのコストが増大したり、間違った判断を下してしまう可能性が高くなってしまうからです。
本人の経験などを考慮してアサインを決定するようにしましょう。

とはいえ、IT人材不足に陥っている企業は多いと思います。まずは、情報システム部門の体制を強化したい、と考えている方はぜひ以下の記事もご覧ください。
情報システム部門のITケイパビリティを高めるためのステップや具体的な施策を紹介しています。

 

仕事への取り組み姿勢

プロジェクトを達成したいと思っているか、モチベーションがあるかという点もアサインを決定するのに重要です。

また、周囲とうまくコミュニケーションを取って連携して仕事を進められるかといった点も、期間とコストが明確に決まっているプロジェクトという形式ではより重要になります。

 

以上のような観点を総合的に鑑みてプロジェクトにアサインするメンバーを決定してください。

さいごに

役割・責任範囲が明確になっておらず、適切なメンバーがアサインされていないプロジェクトを成功させることは至難の業です。逆に言えば、役割・責任範囲の明確化、適切なメンバーのアサインをすることができれば、プロジェクトの成功確率を大幅に向上させることができます。

プロジェクトの立ち上げ時には、体制を検討する以外にも、次に実施する現状調査の計画を立てる、システムの導入方針を決定するための調査をする、予算を確保する、など他にも実施すべきことがたくさんあります。プロジェクトの立ち上げ段階で実施すべきことについては、以下の記事をご覧ください。

 

ぜひ本記事で紹介をしたポイントを考慮して、プロジェクトの体制を検討してみてください。

IT調達ナビを運営しているGPTechでは、プロジェクトの立ち上げ・企画段階から支援をしています。まずはお気軽にご相談ください。

 

この記事の編集者

堀井 友貴

堀井 友貴

IT調達ナビの運営会社である、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 同社のシステム発注側に立って支援するITコンサルティング業務で得られた経験から、システム発注に関わる人々の役に立つ記事を執筆する。

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