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校務DXを成功させる環境整備 ~GIGA(学習系)と校務系統合の重要なポイントを解説~

0.はじめに

令和7年度からは、GIGAスクール構想2期に入り、CBTの実施も本格的に開始され端末の活用がこれまでよりも更に進むことになります。

しかし、GIGAスクール構想第1期で整備したネットワーク環境の改善やGIGA端末の入替も必要となるため、GIGAスクール構想で整備した環境の運用保守だけでも、担当者の負担は非常に大きなものとなっています。

そのような状況の中で、校務系環境とGIGA(学習系)環境の統合が求められているため、少しでも担当者の皆さんの負担を減らすことが出来ればと思い記事を書かせていただいております。

1.校務DXとは 

校務DXは、デジタル化により学校現場の業務を効率化し教職員の負担を軽減することで、教育活動の質を向上させることが目的です。 

これまでは、統合型校務支援システムを導入することで、在席管理、出席管理、成績処理、通知表作成、指導要録作成などについて、手書きからシステム入力へ移行し、校務の業務効率化を進めてきました。 

今後は、校務支援システムに蓄積された校務系のデータと学習系に蓄積されたデータを連携し利活用できる環境教職員と保護者のコミュニケーションツールなどが求められています。 

具体的には、データ利活用であれば個別最適化された学習支援や児童生徒の問題の早期発見などがあります

そのほか、教職員と保護者のやり取りを、電話や紙から学習系端末やスマートフォンなどを活用できるように変えることで、業務が効率化されるだけでなく、連絡の漏れなども防ぐことが出るようになります。

出典:「文部科学省,GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~(詳細版),p28」

2.GIGA(学習系)環境と校務系環境の統合の目的

環境の統合の目的は、「適切なコスト」で教職員が校務支援システムなどの校務系環境を「いつでも・どこでも・安全・快適」に活用できる環境を整備し、校務支援システムのデータや学習ログなどのデータ利活用を推進することです。

そのため、今後、校務系とGIGA(学習系)のネットワークの相互接続によるデータの連携が重要となります。

これを実現するために、セキュリティを担保した上で、GIGA(学習系)環境と校務系環境を統合し、全体最適化を行う必要があります。

また、運用保守を効率化し、教育委員会の教職員の業務負担を低減することも目的の1つになります。

そのため、まずはネットワーク環境を統合することが必要となります。

これまでは、校務系と学習系でネットワークを分離するようになっていましたが、令和5年3月に示された「GIGA スクール構想の下での校務 DX について~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~」の中で、今後の教育情報システムのあるべき姿として、これまでの境界防御型セキュリティではなく、アクセス制御によるセキュリティ(ゼロトラスト)を前提とした校務系ネットワークと学習系ネットワークの統合が示されています。

出典:「文部科学省,GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~(詳細版),p29」

教育ICT環境の全体最適化が目的のため、ネットワーク環境統合とパブリッククラウドを前提とした校務支援システムなどの環境整備も並行して行う必要がありますが、校務系端末とパブリッククラウドの適切な組み合わせについても忘れずに検討する必要があります。

これまでは、校務支援システムの環境はオンプレミスやプライベートクラウドで整備され、ネットワークも分離されていたためデータの移動や連携が難しく、データ活用が難しかったのですが、GIGA(学習系)環境と校務環境を統合し全体最適化することでデータ利活用と運用保守が容易になります

3.GIGA(学習系)環境と校務系環境の統合の注意点

環境を統合する上で注意しなければならないのは、統合することが目的ではないということです。環境を統合できたとしても、「データ連携が上手くできない」「管理が煩雑で運用が大変」「構築費用が高額」ということになってしまうと、統合した意味が無くなってしまいます。

「適切なコスト」で教職員が校務支援システムなどの校務系環境を「いつでも・どこでも・安全・快適」に活用できる環境を整備し、校務支援システムのデータや学習ログなどのデータ利活用を推進することが、環境統合の目的であることを忘れないようにする必要があります。

GIGA(学習系)環境と校務系環境の統合は、ゼロトラストでセキュリティを担保し、パブリッククラウドを活用する事が前提となります。

出典:「文部科学省,GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~(詳細版),p30」

出典:「文部科学省,GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~(詳細版),p55」

このような環境を整備するためには、どこに注意して整備しなければならないかを以下に説明します。

3-1. ネットワーク環境統合の注意点

ネットワークについてですが、ゼロトラストを前提とすることで、GIGAスクール構想で整備したネットワーク環境に統合できるため、統合のコストを削減できます。

そのため、GIGAスクール構想で整備したネットワーク環境のネットワークアセスメントと改善対策が適切に実施され、教職員、児童生徒が端末を接続したときに問題が発生しないネットワーク環境が整備されていることが必須です。

 

3-2. 校務系端末環境の注意点

校務系端末と学習系端末が同じOSであれば、コスト削減のため校務系端末の入れ替えのタイミングで1台化することを検討できますが、校務系端末と学習系端末のOSが異なっている場合は、無理に1台化する必要はないため、現場での活用状況、入れ替えに係るコスト、セキュリティ対策など今後の環境整備の方針を踏まえて、1台化するメリット、デメリットを考えどのようにするか検討する必要があります。

3-3. 校務系環境の注意点

校務支援システムやファイルサーバーなどの校務系環境をパブリッククラウドに構築する必要がありますが、その際には、パブリッククラウドで動作する校務支援システムや適切なセキュリティ環境などを同時に検討する必要があります。

特に校務系端末からクラウド上の校務支援システムなどの校務系情報に安全にアクセスするためには、ゼロトラストの環境と併せて多要素認証も導入する必要があります

ゼロトラスト環境ではアクセス制御によりセキュリティを担保することになるため、GIGA(学習系)環境と校務系環境へのアクセス制御の設定を適切に行うことが重要となります。

ここが適切に設定されていないと、情報漏洩などの問題が発生してしまいますので、設計時の考慮漏れ、構築時の設定ミスなどを防ぐために、環境構築の際に十分なテストを実施する必要があります。

3-4. ソフトウェア(アプリ)導入の注意点

ソフトウェアのライセンス管理を考慮せず、ソフトウェア(アプリ)を導入してしまうと、ライセンス管理とアカウント管理が煩雑になってしまいます。

そのため、授業支援ソフトなど導入するソフトウェア(アプリ)はライセンスがMicorsoft365 EducationやGoogleWorkspace for Educationのアカウントと自動連係されるシステムを選択することを推奨します。

ソフトウェアのライセンスがアカウントと自動連係されることで、一元管理することが可能となり、システムのライセンス管理、アカウント管理を効率化することができます。

そのため、ソフトウェアの機能だけでなくライセンス管理、アカウント管理がどのようになっているかについても確認することが重要です。どうしても、ライセンスとアカウントの自動連係が出来ないソフトウェア(アプリ)を導入しなければならない場合は、別途ライセンス管理、アカウント管理を行う必要が出てくるため、運用保守の負担が最小限になるように十分な検討を行う必要があります。

そのほか、学校での端末活用と運用保守のバランスを考える必要はありますが、ソフトウェア(アプリ)のインストールを個別に行う事が出来ないように、小学校児童、小学校教職員、中学校生徒、中学校教職員のような単位で管理を行うようにするなど、運用ルールを決めておくことで、運用保守の負担軽減とセキュリティリスクの低減を図ることができます。

4. まとめ

ここまでに説明させて頂いたとおり、「適切なコスト」で教職員が校務支援システムなどの校務系環境を「いつでも・どこでも・安全・快適」に活用できる環境を整備し、校務支援システムのデータや学習ログなどのデータ利活用を推進するためには、ネットワーク、端末、ソフトウェアのライセンス管理、アカウント管理などを「一元管理」できるように運用保守までを考慮し設計して整備することが重要です。

そして、ソフトウェアの導入ルールや環境の運用ルールなども併せて検討し整備することも必須となります。

このように、GIGA(学習系)環境と校務系環境を統合し全体最適化した「一元管理」できる環境と、適切な「運用ルール」を整備することができれば、教職員が「いつでも・どこでも・安全・快適」に端末やデータを活用できる環境を実現できることを説明いたしました。

GIGAスクール構想で整備した環境や校務系環境の統合についてお困りのことがあれば、当社にお気軽にご相談ください。少額で利用可能なアドバイザリーサービスメニューもございます。

この記事の編集者

宮原知行

宮原知行

大学卒業後、NECマイクロシステム株式会社入社し11年勤務。車載マイコンの設計、開発業務に従事。 その後、福岡県久留米市役所に入庁し11年勤務。 総務部では統計書作成、健康福祉部ではケースワーカーとして従事しつつ、生活保護システム入替を担当。 教育委員会では、GIGAスクール構想の環境整備を担当。 担当してきた業務の経験から、発注者と受注者の通訳となり適切なICT環境整備の支援を行いたいと考え(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに中途入社。主に公共部門の業務支援に従事しつつ、IT調達ナビでシステム発注に役立つ記事を展開するメディア運営業務にも携わる。

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