
教育ICT環境整備で業務効率化が進まない理由と解決策|業務改革(BPR)の重要性
ICT環境整備のための適切な仕様書を作成し、優れた業者が環境を構築しシステムも問題なく稼働しているにもかかわらず、業務が効率化しないということがあります。
業務効率化が実現されない場合、導入したシステムが良くないと考えられてしまうことが多いと思いますが、システムは問題なく稼働しているということは、仕様書のとおりに環境が構築されているということになるので、その他の部分に問題があるということになります。
業務効率化が実現されない状況にならないようにするためには、どのような対策を講じれば良いかを説明していきたいと思います。
1.業務改革(BPR)の重要性
GIGA第2期、次世代校務DXでは、クラウドサービス、デジタルデータ、AIなどを活用し、教職員の働き方改革、教育の質の向上を実現することを目的としています。
この目的を実現するためには、業務改革(BPR)が必要不可欠です。
業務改革(BPR)とは、既存の業務全体を見直し、効率化や最適化を図ることです。
具体的には、業務プロセスの見直しを行います。
既存の業務プロセスを単に改善するのではなく、従来の制約を取り払って最適な業務フローを設計します。
また、現場のユーザーの視点も業務プロセスに取り入れることで、環境の変化による現場の不満を減らすことができます。
業務改革を行った後にICT環境を整備することで、適切な環境を構築できるため業務の効率化を図ることができます。
そのため、業務改革は非常に重要です。
2.現状の業務プロセスの確認
GIGA第2期、次世代校務DXを成功させるためには、まず現在のICT環境や業務プロセスを確認し、無駄なプロセスがないかをチェックすることが重要です。
これまでの多くのケースでは、既存の業務プロセスに合わせてシステムの仕様書を作成し導入していましたが、その結果、無駄な機能や手順もシステムに組み込まれてしまうことがありました。
このような方法で、システムが導入されてきたことで、効率化が進まず、逆に手間が増えてしまうというようなことが発生していました。
GIGA第2期、次世代校務DXを成功させるためには、本来の業務の目的を達成するために必要な業務プロセスと不要な業務プロセスを整理し現状を把握することが不可欠です。
3.業務プロセスの見直し
現状のフローを確認し整理した後、業務プロセスを改善する目的を明確にします。
例えば、「作業時間の短縮」や「運用保守費用の削減」などです。
次に、業務プロセスを見直す範囲が十分かどうかを確認する必要があります。
検討範囲がずれていたり、不足していたりすると、適切な業務プロセスを作成することができません。
そして、単純に無駄を省くだけではなく、現場で必要な機能や使いやすさなども考慮する必要があります。
そのため、業務プロセスの見直しをおこなう際には、システムを利用している現場の意見などについても可能な限り収集し、ICT環境の導入を担当する部署とICT環境を使用する部署の理解の齟齬を最小限にすることが重要です。
4.ICT環境を活用した業務プロセス
次に、ICT環境を活用し業務プロセスを改善する方法を考えることになります。
具体的な例として、アンケート実施手順をイメージしてみると分かりやすいと思います。
以下の図のように、ICT環境(アンケートツール)を活用することで、アンケート作成とメール送信だけで作業が完了することが分かります。
見直し前の実施手順でアンケートを実施する場合、アンケートを行う人数が増えると、増えた人数分業務量が単純に増えていきますが、見直し後の業務プロセスでアンケートを実施する場合は、増えた人数分メールの送信先を追加するだけで済みます。
このようにICT環境を活用した業務プロセスを検討することで、大幅に業務効率化を図ることができます。
ただし、「アンケートツールの導入」と「アンケートツールの使用方法の学習」が新たに必要となるため、この部分について理解してもらうための丁寧な説明が必要となります。
5.機能要求の書き方
整理した業務プロセスをもとに、整備するICT環境に求められる機能を整理し「機能要求」を作成します。
適切な業務プロセスが整理できていれば、何を実現したいのかが明確になっているはずですので、それを「機能要求」として整理していくことになります。
機能要求は「何を実現するか」を定義することになるのですが、文章だけでは分かりにくいと思いますので「機能要求」、「機能要件」、「機能仕様」の記載例を以下に示します。
このように、機能要求は「実現したい機能」、機能要件は「どのように実現するか」、機能仕様は「機能の技術的な実装方法」を記載します。
まず「機能要求」をリスト化することで、必要な機能の抜け漏れを確認できるようになります。
プロポーザルで発注する場合は、この「機能要求」のリストを仕様として、「機能要件」「機能仕様」については業者から提案をして頂くことになります。
そして、その提案内容を評価し業者を決定し、契約後に実施する要件定義で「機能仕様」を決定していくことになります。
一方、入札で発注する場合は、「機能要求」「機能要件」「機能仕様」を、入札の仕様書に漏れなく記載しておく必要があります。
そのため、機能仕様を正確に記述することが求められます。
また、契約後に仕様に不備が見つかったとしても「機能仕様」の変更は難しいため、仕様書の作成は細心の注意が必要となります。
6.まとめ
教育ICT環境整備を担当されている事務職の方は、ICT環境整備の発注に必要な仕様書の作成が難しいと感じられていたり、不安に思われているのではないかと思います。
そのような場合は、現在のICT環境や業務プロセスを確認し、業務プロセスの見直しをされてみると良いのではないかと思います。
業務プロセスの見直しにより、「機能要求」までは作成ができるのではないかと思います。
「機能要求」から、「機能要件」「機能仕様」を作成することが難しいようであれば、プロポーザルで業者選定を行うという判断ができますし、「機能仕様」まで作成できるという判断ができれば、入札で業者選定を行うことになると思います。
適切な業務プロセスの検討ができれば、必要な「機能要求」が明確になりますし、「機能要求」であれば、高度な技術的な知識、知見は求められないため仕様書作成のハードルも下げることができます。
そして、「プロポーザル」と「入札」のどちらで発注を行う方が良いかの判断もできるようになります。
ただ、整備するICT環境が複雑で「機能要求」の作成も難しいというようなこともあるかと思いますので、そのような場合は、当社にお気軽にご相談ください。
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