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GXとは? DXとの違いや取り組むメリット、IT部門が果たす役割、課題や展望を解説!

近年、企業経営において「GX(グリーントランスフォーメーション)」という言葉が注目を集めています。GXとは、企業が環境や社会への責任を果たしながら、持続的な成長を実現するための変革を意味します。気候変動や資源枯渇など、地球規模の課題が深刻化する中、事業活動を通じた積極的な貢献が求められているのです。

GXは、単なる環境対策やCSR活動にとどまらない、企業経営のパラダイムシフトを示唆しています。環境や社会への配慮を事業戦略の中核に据え、イノベーションを通じて新たな価値を創出することが、GXの本質だと言えるでしょう。そのためには、トップのリーダーシップはもちろん、全社的な意識改革と実践が不可欠です。

本記事では、GXの基本的な意味合いや企業の取り組み事例を解説するとともに、GXを推進することで得られるメリットや課題や今後の展望についても考察します。また、GX時代においてIT部門が果たすべき役割についても言及し、いかにGXの実現を後押しするかについてお話しします。

持続可能な社会の実現に向けて、GXは避けて通れない道のりです。大企業のみならず、中堅・中小企業を含めた皆様が、GXをどのように捉え、どのように実践していくべきか。本記事が、読者の皆様のGXに対する理解を深め、行動を促す一助となれば幸いです。

1. GXとは 、DXとの違い

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、企業が環境負荷低減や社会課題解決に取り組みながら、自らのビジネスモデルを変革していくことを指します。気候変動や資源枯渇などの地球規模の課題に対応するため、企業は事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献することが求められています。GXはこうした要請に応える企業経営の在り方と言えるでしょう。

GXは、DX(デジタルトランスフォーメーション)と並んで注目される概念の一つです。DXがデジタル技術を活用した業務効率化や新たな価値創出を目指すのに対し、GXは環境問題の解決と事業成長の両立を重視する点に特徴があります。両者は互いに関連し合いながら、企業の持続的な成長を支える重要な取り組みと位置付けられています。

2. GXの具体的な取り組み事例

ESGには、環境負荷低減、社会課題解決、ガバナンス強化など、多岐にわたる取り組みが含まれます。

環境負荷低減の取り組み例としては、再生可能エネルギーの導入、省エネルギーの推進、資源の循環利用などが挙げられます。たとえばリコーは、2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出ゼロを目指す「ゼロカーボンチャレンジ」を掲げ、環境配慮型製品の開発や生産工程の効率化に取り組んでいます。

社会課題解決の取り組み例としては、ダイバーシティ経営の推進、人権尊重の取り組み、地域社会への貢献などが挙げられます。

ガバナンス強化の取り組み例としては、取締役会の多様性確保、サステナビリティ情報の開示充実、腐敗防止の徹底などが挙げられます。たとえば伊藤忠商事は、指名委員会等設置会社への移行により、経営の監督と執行の分離を進めるとともに、気候変動関連の情報開示の拡充に努めています。

GXで求められているのは、従来の様なCSR活動としてはなく、こうした取り組みを行い、企業の持続的成長を実現することになります。

経済産業省、近畿経済産業局のレポートによると、岩谷産業株式会社は環境・エネルギー問題を自らの重要課題と位置づけ、究極のクリーンエネルギーである水素の利活用促進による環境負荷低減などを通じて、GXを推進しています。

岩谷産業は、1941年から水素エネルギーの普及に向けた取り組みを進めてきており、グローバル規模で水素利用促進に向けた活動を行っています。2025年の大阪・関西万博に向けた国内初の水素燃料電池船構想にも取り組み、水素エネルギーの可能性を国内外に示すことで、GXの推進力となることを目指しています。

また、会社としても、2050年度までにカーボンニュートラルを目指すことを表明し、2030年度までに2019年度比で50%のCO2排出量削減を目標に掲げています。結果、2020年、カーボンニュートラル宣言も追い風となり、株価は2020年から大きく増加しています。

出典:近畿経済産業局 「関西における水素関連企業データ集」 (令和3年度版 改訂版)p.2

3. GXを推進するメリット

GXを推進することで、企業は様々なメリットを得ることができます。

第一に、GXは企業価値の向上につながります。環境や社会に配慮した事業活動は、投資家や消費者、採用候補者からの評価を高め、ブランド力の強化を通じて、企業の成長を後押しします。

第二に、GXはステークホルダーからの信頼獲得につながります。環境や社会への取り組みを積極的に進める企業は、株主、従業員、取引先、地域社会など、様々なステークホルダーから信頼され、良好な関係を構築することができます。

第三に、GXは持続可能な社会の実現への貢献につながります。企業が事業活動を通じて環境負荷の低減や社会課題の解決に取り組むことは、SDGsの達成に向けた重要な一歩となります。こうした取り組みは、企業の社会的責任を果たすとともに、持続可能な社会の実現に不可欠な役割を担っています。

最も大事なことは、前述した岩谷産業のように新たな事業機会の創出や成長につなげることです。日本政府は2023年2月にGX基本方針を閣議決定し、今後10年間で官民合わせて150兆円を超えるGX投資を行う目標を立てています。換言すれば、政府主導で市場を拡大していくことになります。そのため、このGXトレンドを自社事業(既存・新規合わせて)とリンクさせていくかが今後の事業成長の鍵になります。

4. GXにおいて、IT部門が求められること

GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けて、IT部門の果たす役割はますます重要になっています。今後より一層、デジタル技術を駆使して環境負荷の低減と社会課題の解決を推進することが求められます。

世界的IT関連企業の代表格である、Amazonは2040年までにネットゼロカーボン(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成と2025年までに事業運営に必要な電力すべてを再エネで賄うことを目指しており、Googleにおいても2030年までにすべてのデータセンターを24時間365日カーボンフリーエネルギーで運用することを目指しており、DXとGXを両輪で進めてきています。

出典:Amazon 「気候変動対策に関する誓約」
https://www.aboutamazon.jp/planet/climate-pledge

Google Cloud公式ブログ(2021年7月7日)「Google のデータセンターにおけるカーボンフリー エネルギーの年」https://cloud.google.com/blog/ja/products/infrastructure/google-releases-carbon-free-energy-percentage-for-2020

 

 

図 エネルギー効率の違いを示す例

出典:経済産業省(2021年6月21日)「ソフトウェアに着目したITサービスのエネルギー効率指標の算定方法が国際規格になりました」

IT化の進展や近年の生成AIの普及により、データセンターの電力消費量も増えることが予想されており(2050年には国全体の電力使用量20%にもなる見込み)、今後、IT化による環境負荷が増大することが見込まれています。IT推進のために環境を犠牲にすることは今の時代許されません。つまり、ITメジャーだけではなく、様々な企業のIT部門が自社のITシステムやサービスのライフサイクル管理を通じた環境負荷の最小化や再生可能エネルギーの活用促進、ソフトウェアの処理最適化(≒電力消費量最小化)などの取り組みを行っていくことが求められます。

加えて、投資家やステークホルダーに対し、迅速に正確な非財務情報を開示できるよう、非財務情報の適切な管理(相手任せではない情報の一元管理ができる仕組みとアクセスできる仕組みなど)も欠かせません。

これからの時代、経営層はGXを経営戦略の中核に据え、IT部門は、自社の経営戦略と紐づいたGXアジェンダの推進に向け、デジタル技術の力を最大限に活用できるITインフラ作りデータ管理が重要です。

5. GXの課題と今後の展望

2024年5月13日に開かれたGX実行会議(第11回)では、GXとDXの領域で日本は共に貿易赤字になっており、今後も拡大する恐れがあると警告されています。貿易赤字の縮小に向けては、より一層デジタル技術を活用したエネルギーの高効率化や再エネ電力の最大活用(出力制御等をなくすこと)が必須だと考えられます。

出典:内閣官房 (2024年5月13日)「我が国のグリーントランスフォーメーションの加速に向けて」 p.23 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gxjikkoukaigi/dai11/siryou1.pdf

ただ、GXの推進には、いくつかの課題も存在します。環境や社会への取り組みには、現時点ではコストがかかるため、短期的な収益性との両立が難しい場合があります。また、グローバルなサプライチェーンを通じた環境・社会リスクへの対応や、事業活動による環境・社会への影響の可視化など、企業の対応能力が問われる領域も広がっています。

IT部門においては、レガシーシステムの刷新や新たなデジタル技術の導入に伴うコストの増大、ITインフラの環境負荷の管理、サイバーセキュリティ対策の強化など、GX推進に向けた課題が山積しています。これらの課題に対応しながら、環境・社会課題の解決に貢献するIT戦略を立案・実行することが求められます

6. まとめ

GXは企業の持続的な成長にとって不可欠な取り組みであり、今後さらなる進展が期待される分野です。特に、気候変動対策の強化や人的資本経営の推進など、企業経営の根幹に関わる分野でのGXの取り組みが一層重要になるでしょう。また、デジタル技術の活用により、GXの取り組みの高度化や効率化が進むことも予想されます。

企業経営者は、GXを自社の経営戦略の中核に据え、環境や社会への配慮を事業活動の隅々にまで行き渡らせることが重要です。そのためには、トップのコミットメントを明確にし、全社的な推進体制を構築するとともに、従業員一人ひとりのGXへの理解と実践を促していく必要があるでしょう。

IT部門には、デジタル技術を駆使してGXを推進する重要な役割が求められています。環境負荷の低減、社会課題の解決、サイバーセキュリティの強化など、多岐にわたる領域でITの力を発揮し、企業のGX実現に貢献することが期待されます。IT導入の際は、先頭に立ち導入目的などをしっかりと整理・可視化し、社内ステークホルダーで認識合わせをしておくことが求められます。

GXの実現には、IT部門だけでなく事業部門が主体的に自らの事業や業務の再構築に取り組むことが不可欠です。しかし、サステナビリティの社会的要請を踏まえた事業変革は、一朝一夕には実現できません。そこで、弊社では、事業部門の長期的な脱炭素経営実現を支援する伴走サービスを提供しています。

本サービスは、「事業部門がサステナビリティの社会的要請を踏まえ、自分たちの事業や業務をどのように再構築していけるかを主体的に考えること」に主眼を置いており、Fit to Standard(※)の考え方を採用しています。顕在化している社会の脱炭素経営要請に合わせ、事業部門が主体的に自分たちの事業や業務の再構築プロセスを検討することを支援します。また、事業や業務の再構築プロセスを基に、開示に向けた脱炭素ストーリーの検討も支援します。

GXの実現には、大企業のみならず、中堅・中小企業の取り組みも必要不可欠となります。また、経営層のリーダーシップだけでなく、IT部門や事業部門の主体的な取り組みが欠かせません。弊社の脱炭素支援サービスを活用いただき、貴社のGX推進に弾みをつけていただければ幸いです。持続可能な社会の実現に向けて、ともに歩んでいきましょう。

※ Fit to Standard:事業や業務のあるべき標準形を設定し、それに適合させていくこと。

参考:GPTech脱炭素支援サービスのプレスリリース

 

GX推進にお悩みの方は、お気軽に下記よりご相談ください。

 

この記事の編集者

柳元 華奈

柳元 華奈

北京大学日中通訳専門修士卒。日本経済の活性化を目指し、日本のIT変革やアジアとの架け橋となるべく、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 主に民間企業のシステム刷新プロジェクトに従事し、同社のPR・マーケティング全般の業務やIT調達ナビの運営業務にも携わる。

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