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パッケージとは?システム導入前に知っておくべき基礎知識について解説

IT分野におけるパッケージとは、あらかじめ製品化されたソフトウェアや業務システムを指します。

一般的に、多くの企業が共通して利用できるように設計されており、販売管理や会計など、特定業務に必要な機能が標準で搭載されています。

これに対し、システムをゼロからオーダーメイドで構築する方法をスクラッチ開発と呼びます。

スクラッチ開発と比較したパッケージ導入のメリットは下記です。

  • 初期費用を抑えることができる
  • 短期間で導入できるため、早期に業務改善効果を得ることができる

一方、パッケージ導入のデメリットは下記です。

  • 自社特有の業務フローに対応できない可能性がある
  • 他システムと連携をする際、インターフェースの互換性などを検討する必要がある

パッケージの標準機能で対応できない業務については、アドオン開発やカスタマイズなどによって補完することも可能です。

ただし、追加開発にはコストが発生し、ソフトウェアのバージョンアップ時に対応が難しくなるといった課題もあります。

そのため、パッケージ導入時には、パッケージが持つ標準機能と自社の業務要件・業務プロセスとの整合性を確認することが重要です
この分析手法は「Fit & Gap分析」と呼ばれます。

なお、IT調達ナビの運営会社である(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーでは、パッケージ選定時の製品比較において、製品ロングリスト→製品ミドルリスト→製品ショートリストの3段階で候補を絞り込む手法を提唱しています。

詳細について知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

 

よくある質問

パッケージ導入後のベンダーロックインリスクを軽減する方法は?

パッケージ導入後のベンダーロックインリスクを軽減する方法は、契約段階での条件整理、データ移行性の確保、複数ベンダーを前提とした体制整備です。

発注者は導入時点から将来的な選択肢を担保しておくことが重要です。

主な軽減方法

1. 契約条件の明確化

・保守・サポート契約において、解除条件や他ベンダーへの引き継ぎ可否を確認する。
・バージョンアップやライセンス形態の変更に伴う費用を契約時に明確化しておく。

2. データ移行性の確保

・データがオープンな形式(CSV、SQLなど)でエクスポート可能かを確認する。
・移行用インターフェース(API等)の提供有無や仕様の公開範囲を事前に確認する。

3. カスタマイズ範囲の制御

・過度な独自カスタマイズは、将来のバージョンアップや他製品への移行を困難にする。
・業務をシステムに過度に合わせず、標準機能を最大限活用する方針を持つ。

4. 複数ベンダー前提の体制づくり

・導入ベンダー以外でも保守可能な体制(ドキュメント整備、標準規格の利用)を確保する。
・運用フェーズで特定ベンダーに依存しすぎないよう、契約更新時に競争環境を維持する。

ベンダーロックインは完全に避けることは困難ですが、契約・データ・カスタマイズ・体制の4つの観点で事前に手を打つことでリスクを大幅に軽減できます。

発注者は、導入時点から「将来の出口戦略」を意識しておくことが望ましいです。

パッケージのカスタマイズはどの程度まで許容すべきか?

パッケージのカスタマイズは、業務遂行に不可欠な範囲に限定することが望ましいです。

過度なカスタマイズは、将来のバージョンアップや保守の負担を増大させ、結果としてコストやリスクの上昇につながります。

許容の考え方

1. 最小限にとどめる

・「業務要件を満たすためにどうしても必要な部分」のみに絞る。
・既存業務をシステムに合わせる努力を優先し、安易に機能追加しない。

2. 保守・アップデートへの影響を考慮する

・独自カスタマイズはベンダーの標準アップデートで動作保証されないことが多い。
・将来的な移行・改修が困難になり、ベンダーロックインの要因となる。

3. 代替手段を検討する

・パッケージ標準機能の組み合わせや運用方法の工夫で対応できないかを確認する。
・外部システム連携(API活用など)で解決できる場合はカスタマイズを避ける。

4. 契約・コストへの明示

・カスタマイズ部分は保守契約外となることが多いため、追加コストや責任範囲を契約時に明確化する。

パッケージのカスタマイズは、「必要最低限」「将来の保守・移行に支障を来さない範囲」を基本とすべきです。

発注者はベンダー提案をそのまま受け入れるのではなく、業務の標準化や運用の工夫を優先して検討し、カスタマイズ依存を避けることがリスク軽減につながります。

パッケージ導入で発生しやすい失敗例と、その防止策は何か?

パッケージ導入で発生しやすい失敗は、業務との不適合、過度なカスタマイズ、導入後の運用体制不足に起因するケースが多いです。

発注者は、選定段階から運用フェーズまでを見通した計画と統制により、これらの失敗を防止することが重要です。

発生しやすい失敗例と防止策

1. 自社業務との不適合

・失敗例:業務要件を十分に精査せず導入し、パッケージの標準機能が自社業務に合わない。
・防止策:要件定義を徹底し、評価基準を明確化したうえで複数製品を比較検討する。PoC(概念実証)を通じて適合性を確認する。

2. 過度なカスタマイズ

・失敗例:標準機能では対応できない部分をすべてカスタマイズし、アップデート不能・コスト増につながる。
・防止策:カスタマイズは業務遂行に不可欠な範囲に限定し、業務をシステムに合わせる方針を優先する。

3. ベンダーロックインの強化

・失敗例:特定ベンダーの独自仕様に依存し、移行や保守を他社に委託できなくなる。
・防止策:契約時にデータ移行性やAPI仕様を確認し、将来の移行可能性を担保する。

4. 運用・保守体制の未整備

・失敗例:導入後に利用部門や運用部門への教育不足から、機能を十分に使いこなせない。
・防止策:導入前からユーザー教育計画やヘルプデスク体制を整備し、定着を支援する。

5. 費用対効果の不明確さ

・失敗例:ライセンス費用や保守料が想定以上に膨らみ、投資対効果が見えにくくなる。
・防止策:契約時にコスト構造を明確化し、TCO(総保有コスト)の観点で評価する。

パッケージ導入は効率的な選択肢である一方、不適合・過度なカスタマイズ・体制不足といった典型的な失敗パターンが存在します。

発注者は導入前からリスクを想定し、契約・教育・運用設計を含めた総合的な対策を講じることが成功への鍵となります。

この記事の編集者

武田 祥太郎

武田 祥太郎

大学時代法学部で労働基準法の研究を進める中で日本の労働生産に課題を感じ、ITによる企業体質の健全化を目指して(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 民間企業のITガバナンス、マネジメント支援業務に従事し、同社のナレッジ活用知見を活かしてIT調達ナビで記事の展開にも携わる。

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