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情報システム部門が企業価値向上に貢献するために取り組むべき2種類の施策

この記事では、自社の情報システム部門の現状に対して課題意識を感じているマネジメント層に向けて、情報システム部門の本来のあるべき姿についてお伝えします。

自社の情報システム部門が「全く事業利益を生まない部門」「単なる社内ヘルプデスク」に留まってしまっている現状を変えたい、と課題意識を感じている方に、是非読んでいただきたいと思います。

1. 情報システム部門の変遷

1-1. 事業活動と「分離」したIT利用がもたらした情報システム部門のコストセンター化

政府は、2018年に公表したDXレポートで、“2025年の崖“と称して「レガシーシステムから脱却し、経営を変革」する必要性を主張しています。

ただし、今日においても、依然として課題は山積みの状態です。懸念されているレガシーシステムの技術的負債の増大、保守運用の人材不足やセキュリティリスクの増大等の課題は着実に表面化しつつあると言えます。

政府が警鐘を鳴らしているにも関わらず、レガシーシステムからの脱却やDX推進が加速しない原因はどこにあるのでしょうか?

以下のような呟きは珍しくありません。

事業部門Aさん:
「気がつけばITシステムが導入されていたが、自部門の業務内容と合わず、全く使っていない」 

情報システム部門Bさん:
「ITは万能薬だと社長が信じ込んでおり、無理難題が次々にふってくる。『DX』と叫んでいる社長自身がITを全く理解していない」

DX推進が叫ばれ、多くの企業が「なんとなく」ITシステムを導入し、「なんとなく」DX推進部門を設立するものの、思うようなDX推進につながっていないのが現状です。

DX推進が加速しない根本的な原因の一つとして、「ITと事業活動が分離していること」、より具体的には「経営・事業部門の主体性がなく、かつ情報システム部門と経営・事業部門が連携することなくDXを推進していること」だと考えます。

ITとは本来、企業経営の重要イシューに対する解決手段や目的を達成するための施策という位置づけです。

しかしながら、これまで情報システム部門は「コストセンター」とみなされて規模を縮小され、時に子会社への切り出し(いわゆる情報子会社問題)も発生しました。DX推進において重要な機能を持った情報システム部門が縮小することにより、企業内でのシステム内製が困難となり、コスト高になっても外部委託せざるを得ず、効率的・効果的なDX推進ができていない実情となっています。

情報システム部門の在り方を見直し、事業活動とITを連携できる情報システム部門に変革していくことが、DX推進の鍵になると考えています。

2.情報システム部門の現状

2-1. 既存システムの運用・維持に終始する現在の情報システム部門

ITの利活用には相応のコストが伴いますが、その目的に応じて「費用」的性格と「投資」的性格があります。既存システムの運用保守にお金かけることは必要な「費用」ですが、そればかりでは、新たな価値を生み出す「投資」とは呼べません。

また、「投資」においても、既存ビジネスの業務コスト削減・効率化が主眼の「守りのIT投資」にとどまるのではなく、「攻めのIT投資」による提供価値の拡大が求められます。

つまり、単なる「費用」から「投資」へ、そして「投資」においても「守りのIT投資」から「攻めのIT投資」へと比重を高めていくことが重要です。

図1 IT領域における「費用」と「投資」の違い

しかし、多くの情報システム部門では、システム運用・保守・報告業務や問合せ対応など、既存システムの運用・維持を目的とした「費用」的業務に大半の業務時間を割いている状態(※)といわれています。

※株式会社ソフトクリエイト「情報システム部の実像2022」参照

既存システムの運用はもちろん重要な業務ですが、そればかりに集中していては、企業価値を高める「投資」にリソースをかけることは難しいでしょう。「費用」から「投資」へ、それが現状の情報システム部門にとって必要なことです。 そのための具体的なアプローチについては、第4章で詳細に説明します。

3. DX時代に求められる情報システム部門の役割と変革の方向性

3-1. これから求められるのは「攻める」ことができる情報システム部門

DX時代においては、守りのITに加え、攻めのIT活用を推進していく必要があります。

つまり、情報システム部門は「経営とITを連携させ、企業価値向上に向けた活動方針や計画を示し、活動を推進させる組織(プロフィットセンター)」となっていく必要があります。

また、ITトレンドの移り変わりは早いため、企業の競争優位性を維持するには常にITトレンドを把握し、企業に最適なITの活用が求められます。現状維持に努めるだけではいずれ衰退していく、それはDX時代においては益々顕著になります。

これからの情報システム部門は、

・能動的にITトレンドを把握しつつ、

・組織全体の経営戦略(または事業部門の事業戦略)を理解し、

・ITの側面から貢献できる施策を経営目線で企画・提案していく

ということが求められます。
それによって、情報システム部門が企業のDX推進を主導することができます。

3-2. 情報システム部門の目指すべき姿の定義と浸透から始める

DX推進に向けてまず実施すべきは、情報システム部門の目指すべき姿(経営とITを統合した組織としてのビジョン・ミッション)を定義し、組織に浸透させることから着手していくことです。

ビジョンやミッションなく様々な施策を打ったとしても、長期な改善は望めません。しっかりと自分たちの目指すべき姿を定義・浸透させ、その上で、ガバナンス体制の強化やIT調達の適正化などの統制強化を図っていくことが有効です。

そして、組織としての成熟度が高まった後、経営戦略を踏まえたIT戦略を策定し、当該戦略に基づいた施策の実施を行っていけば、効率的に効果を獲得することができ、かつ、能動的な「攻める姿勢」を持った組織へと変革することができると考えています。

3-3. DX推進において、企業のITケイパビリティが鍵を握る

それでは、どのようにして情報システム部門の目指すべき姿を定義すればよいのでしょうか。

紙の稟議書などのアナログな業務プロセスがメインとなっている企業が、“DX”に取り組んでもうまくいかないことが容易に想像できるように、DX推進は段階を踏んで行うことが現実的です。

図2にあるように、まずはデジタイゼーションを通して業務のデジタル化(「守りのIT」に該当)を行い、その過程で組織のITケイパビリティを強化します。
その上で、策定したあるべき姿に基づいて既存ビジネスモデルの変革や顧客体験の提供(デジタライゼーション)、デジタルを前提とした新しいサービスやビジネスモデルの構築(トランスフォーメーション)を行っていきます。

図2 DX推進のステップ(組織としてDXに取り組む場合)

しかし、第1段階のデジタイゼーションを外部事業者や特定人材に依存で進めてきた企業も多く、そのような企業は自社のITケイパビリティが高まっていないため、デジタイゼーション(守りのIT)止まりとなってしまいます。デジタライゼーション以降の段階では自社と顧客の関わりなどビジネス変革の要素が大きく、外部頼みで進めることは困難なためです。

そのような企業は、いわば1.5段階として「ITケイパビリティの高い組織」を目指す必要があります(図3)。デジタライゼーション以降を着実に実現するため、まずはデジタル活用・データ活用能力が高い組織となり、DXへの対応力を高めることが重要です。

図3 DX推進のステップ(外部や特定人材などに依存し組織として取り組んでこなかった場合)

4. 情報システム部門のITケイパビリティを向上させるための2種類の取り組み

下の図4に情報システム部門の主な業務をマッピングしました。

図4 情報システム部門の業務分類と業務例

この記事をお読みいただいている皆さまの自社の情報システム部門は、どのような業務を多く抱えているでしょうか?

もし既存システムの運用保守やヘルプデスク対応(図4の左下「受け身」)しかできていないのであれば、残念ながら、DXに向けては危険信号です。

まず取り組むべきは、「受け身」な業務を減らすことです。そのうえで、守りのIT投資には分類されるものの企業価値貢献につながる「統制強化」業務に取り組み、そして「収益貢献」につながる攻めのIT投資の業務を増やしていく必要があります。

現状の「受け身」な業務集中から脱却し、企業価値貢献に直結する業務ができる組織へ跳躍するにあたって、「ノンコア業務のアウトソーシング」および「実行力強化」を両輪で実行する必要があります。

A. ノンコア業務のアウトソーシング

DXを進めたいと考えている企業は多いものの、多くの情報システム部門はシステム運用・保守や障害対応等のノンコア業務に大半の業務時間を投入しているのが実情です。

前述したように、それではDXを推進するリソースを確保できず、いつまで経ってもDXが進まない状態となってしまいます。

図4の「受け身」の業務をアウトソーシングすることで、情報システム部門のメンバーが企業貢献に貢献する業務(「統制強化」および「収益貢献」業務)に時間を割くことができます。

※ただし、自社メンバーが窓口となることで迅速な対応が出来る部分もあるため、ノンコア業務を全てアウトソーシングすることが業務の効率化につながるわけではなく、あくまで戦略的な業務委託が重要となります。

B. 社員の実行力強化

当然のことながら、「受け身」の業務を減らせばそれだけで「攻め」の業務ができるということはありません。DXは意気込みだけで達成できるものではなく、推進担当者に相応の実行力(ITに関する専門性やプロジェクトマネジメント力、完遂力等)が求められます。「受け身」の業務を減らした時間を使って、まずは実行力を高めるための取組みを推進していく必要があります。以下に、実行力強化のための施策例を紹介します。

※実行力の強化には「外部人材の採用」も考えられますが、本記事では既存社員の実行力「強化」に主軸をおいています。

B-1.外部研修の受講

無料の動画コンテンツや書籍だけでは表面的/部分的な知識、または一般化された知識しか習得できず、限定的な理解にとどまってしまう可能性があります。それでは冒頭で述べたような、「なんとなくのDX」で終わってしまい、求めていた効果が得られません。

IT技術の知見だけではなく、ガバナンス体制の強化やIT調達の適正化、プロジェクトマネジメント等のノウハウを身に着けられる外部研修の受講は、担当者のスキルセット強化に必要な手段の1つです。

B-2.協調型アウトソーシングの活用

研修だけでは限界がありますので、実践機会が重要です。しかし、実践する力がないためプロジェクトを立ち上げられないという矛盾にぶつかっている組織は多くあります。その際に活用を検討すべきは協調型アウトソーシングです。

協調型アウトソーシングとは、企業(アウトソーシングの依頼主)が推進主体、アウトソーサーが補完的役割を担いつつ、協調して業務を進める伴走型支援を指します。アウトソーサーのもつスキルやノウハウでサポートを受けることで、投資リスクを抑制する形でプロジェクトを立ち上げられ、社員にとっては実践機会を通じて実行力を強化することができます。

5. さいごに

この記事では、情報システム部門のあるべき姿、DX推進に向けて情報システム部門が注力するべき業務/そうでない業務、DXの実行力を強化するための方法について紹介をしました。

DXに向けて自社がどの位置にあるのか、どの段階を踏む必要があるのか、をまず整理するために、この記事が参考になっていれば幸いです。

また、本記事を執筆・編集したGPTechは、「この国のシステム発注の常識を変える」ことを理念に掲げるITコンサル企業です。
自社内に開発部隊をもたず、システム開発会社とも中立的というビジネスモデルを確立しています。

システム導入自体はクライアント企業様にとってはスタートでしかないと認識しているため、発注者側のケイパビリティ向上、体制強化を重要視しながらコンサルティング業務を行っております。

「この国のシステム発注の常識を変える」ため、直接的には協調型アウトソーシング(B-2)、間接的には情報システム部門の体制強化研修(B-1)を通して、クライアント企業のDX推進を加速させていきたいと考えています。

情報システム部門の体制強化やシステム刷新・導入について、ご相談のある企業様はぜひGPTechまでお問い合わせください。

 

 

この記事の編集者

関 孝善

関 孝善

IT調達ナビの運営会社である、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 同社のシステム発注側に立って支援するITコンサルティング業務で得られた経験から、システム発注に関わる人々の役に立つ記事を執筆する。

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