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教育ICT環境整備の業務委託プロポーザル~評価基準と業者選定のポイント~

1.評価基準の作成 

地方自治法では、地方自治体の契約は競争入札が原則となっていますが、契約の性質や目的が競争入札に適さない時には、随意契約によることができることになっています。 

プロポーザル方式は、価格よりも提案内容から技術力や専門性などを重視して評価し、随意契約を行う業者を選定するための方法です。

この方式において、評価基準の作成は非常に重要です。

評価基準が不明確であると、適切に業者を評価することができません。

そのため、業者を適切に評価するためには、評価基準は分かりやすく、明確である必要がありま。 

 

1-1.目的と要件の明確化 

まず、整備する教育ICT環境の目的と要件を明確にします。

例えば、教職員の業務負担軽減、ネットワークのセキュリティの強化、コスト削減などが考えられます。

これらの目的と要件を整理し、その内容に基づいて評価項目と評価基準を作成します。 

 

1-2.評価項目の設定 

目的と要件に基づいて評価項目を設定します。

一般的な評価項目には以下のようなものがあります。 

評価項目 評価内容
業務理解  業務の背景や目的の理解
技術力 機能要件を満たす環境の実現方法
実績 過去の類似プロジェクトの実績
体制 構築時の体制や導入後の運用保守体制
実施計画 構築の実施工程、期間などの妥当性
独自提案 有益な独自の提案内容
価格 提案された価格の妥当性

 

1-3.評価基準の数値化

各評価項目に対して点数を設定し、数値化します。 

例えば、合計点を100点とした場合、業務理解を10点、技術力を30点、実績を20点、体制を20点、追加提案を10点、価格を10点といった具合です。 

また、合計点が60%未満の場合は候補者として選定しないなど、提案内容の合格ラインを設けておくことで、適切な提案が無いと判断した場合にはプロポーザルの手続きを中止することができます 

 

2.提案書の評価ポイント 

提案書の評価ポイントを明確にすることで、評価者が適切に評価を行いやすくなります。

そのため、評価項目表には評価基準をできるだけ具体的に記載する必要があります 

 

2-1.業務理解の評価 

業務理解の評価では、業務の背景や目的を踏まえ、現状の課題を理解しているかを確認します。

評価するポイントは以下の通りです。 

・現状の課題を把握、理解しているか 

・業務の全体像を理解しているか 

・求められている環境を理解しているか 

 

2-2.技術力の評価 

技術力の評価では、提案内容が機能要求を満たしていることや実現性など確認します。

機能要求については、業者が主観的に「機能要求を満たしている」と判断して記載していることも多いため、契約後、要件定義で、それらの仕様が実現できず機能が削られてしまうということもあります

のような事態を避けるためにも、技術力の評価は特に重要です。

評価するポイントは以下の通りです。 

・提案内容が機能要求を満たしているか(実現可能か) 

・提案内容が目的に適合しているか 

・提案内容に具体的な内容が示されているか 

 

2-3.実績の評価 

実績の評価では、過去の類似プロジェクトの実績を確認します。評価するポイントは以下の通りです。 

・過去に類似のプロジェクトの実績があるか 

・提案書に記載された実績が信頼できるものであるか 

 

2-4.体制の評価 

体制の評価では、環境構築や導入後のサポートやメンテナンス体制を確認します。

評価するポイントは以下の通りです。 

・設計、構築の実施体制が整っているか 

・導入後のサポート体制が整っているか 

・メンテナンスやトラブル対応が迅速に行われるか 

 

2-5.実施計画の評価 

実施計画の評価では、環境構築の実施工程、期間などの妥当性を確認します。

評価するポイントは以下の通りです。 

・環境構築に必要な作業が具体的に記載されているか 

・全体のスケジュールが現実的で、無理のない計画になっているか 

・環境構築におけるリスクを想定しているか 

 

2-6.独自提案の評価 

独自提案の評価では、他社との差別化要素や独自の提案内容を確認します。

評価するポイントは以下の通りです。 

・他社との差別化要素があるか 

・独自の提案内容が有益であるか 

 

2-7.価格の評価 

価格の評価では、提案された価格の妥当性を確認します。

評価するポイントは以下の通りです。 

・提案された価格が予算内であるか 

・コストに対する効果が高いか 

 

3.評価者へのサポート 

ICTに関する知識があまり豊富でない評価者でも、業者の提案内容を適切に評価できるようにすることが重要です。

そのため、以下のような工夫が必要です。 

 

3-1.評価基準の具体化 

各評価項目に対して具体的な評価基準を設定し、評価者が理解しやすい構成にする必要があります。

その中でも、特に技術力については、提案された内容が機能要求を満たしているかどうかを正確に確認し、評価することが重要です。

その際、業者に対して質問し、どのように機能要求を実現するのかを具体的に確認することで、評価の精度を高めることができます。 

技術力については、実績やコストのように定量的に判断できない部分が多いため、評価者が適切に評価できるよう、評価基準に評価するポイントを具体的に詳しく記載しておく必要があります。

以下に評価基準の記載例を示します。 

 

このように、評価のポイントとなる部分を具体的に評価基準に記載しておくことで、評価者が提案資料やプレゼン内容について疑問点がある場合に質問しやすくなります

その結果、評価者の提案内容に対する理解が深まり、適切な評価に繋がります。 

 

4.まとめ 

教育ICT環境整備の業務委託先の業者選定をプロポーザル方式で実施する際には、評価基準の作成と提案書の評価ポイントを明確にすることが重要です。

評価基準を明確にし、評価者が理解しやすいように工夫することで、ICTに関する知識があまりない評価者でも適切に評価できるようになり、現場が求める機能要求との乖離を少なくすることができます

これらのポイントを押さえて、最適な業者を選定しましょう。

提案内容が難しい場合は、専門家に確認してもらい解説してもらうことをお勧めします。

当社では、少額で利用できるアドバイザリーサービスも提供していますので、お気軽にご相談ください。 

この記事の編集者

宮原知行

宮原知行

大学卒業後、NECマイクロシステム株式会社入社し11年勤務。車載マイコンの設計、開発業務に従事。 その後、福岡県久留米市役所に入庁し11年勤務。 総務部では統計書作成、健康福祉部ではケースワーカーとして従事しつつ、生活保護システム入替を担当。 教育委員会では、GIGAスクール構想の環境整備を担当。 担当してきた業務の経験から、発注者と受注者の通訳となり適切なICT環境整備の支援を行いたいと考え(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに中途入社。主に公共部門の業務支援に従事しつつ、IT調達ナビでシステム発注に役立つ記事を展開するメディア運営業務にも携わる。

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