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SIer(エスアイヤー)とは?サービス内容や種類、SEとの違いや選び方のポイントについて解説

企業のデジタル化が進む現代において、システム開発やIT導入の際に必ず耳にする「SIer(エスアイヤー)」という言葉。

システム関係の会社というイメージはお持ちかと思いますが、具体的に何をする企業なのか、SEとはどう違うのかなど、疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。

SIerは企業のIT化を支援する重要なパートナーであり、システム企画から設計、開発、導入、そして保守運用まで一貫したサービス提供を行います。

しかし、SIerといっても規模や得意分野、サービス内容はさまざまです。

自社に最適なSIerを選ぶためには、その役割や種類、特徴を正しく理解することが必要不可欠です。

本記事では、「SIerとは何か」という基本的な定義から、主なサービス内容、種類や特徴、SEとの違い、選定時のポイントなど、SIerに関する知識を体系的に解説します。

SIer(システムインテグレーター)の定義とサービス内容

まず初めに、言葉の定義や提供するサービス内容について解説します。

SIerの正式名称と意味

SIerは「System Integrator(システムインテグレーター)」の略称で、一般的に「エスアイヤー」と読みます。

ITシステムの企画、設計、開発、構築、運用などを一括して請け負う企業や事業者を指します。

ちなみに、SIerは「SI」(システムインテグレーション)+「er」(~する者)を組みあわせて作られた日本独自の略語であるため、海外では意味が通じない点に留意が必要です。

SIerという言葉は1990年代以降、企業の情報システム化が急速に進んだ時期から広く使われるようになりました。

複数のハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの要素を統合(Integrate)して、顧客のニーズに合わせた情報システムを構築する役割を担うことから、この名称が付けられています。

SEとの違い

端的に言えばSIerは企業、SEは人です。

前述の通りSIerはITシステムに関する業務を請け負う企業ですが、SE(システムエンジニア)は職種を指します。

SIerに所属しているSEが、ITシステムの設計や開発、運用保守などを行います。

SIerが提供する主なサービス内容

SIerが提供する主なサービスは、下記のものがあります。

これらのサービスを一連のプロセスとして一貫して提供できることが、SIerの強みと言えます。

システム設計開発

  • 要件定義
  • 基本設計・詳細設計
  • プログラム開発
  • データベース設計・構築
  • システムテスト

システム構築

  • ハードウェア・ソフトウェアの選定
  • サーバー・ネットワークの構築
  • パッケージソフトのカスタマイズ
  • クラウドサービスの導入と設定

システム導入

  • 移行計画の立案と実行
  • データ移行
  • ユーザートレーニング
  • マニュアル作成

保守・運用サービス

  • システム監視
  • 障害対応
  • バージョンアップ対応
  • セキュリティ管理
  • ヘルプデスク

エンドユーザーとメーカーの橋渡し役としての位置づけ

SIerはシステムを利用するエンドユーザー企業とハードウェアやソフトウェアを提供するメーカーとの間に立ち、両者をつなぐ「橋渡し役」として重要な役割を果たしています。

エンドユーザー側としては各メーカーとの交渉や調整をSIerに託すことで負担が軽減でき、メーカー側としては顧客の声をフィードバックしてくれる販売パートナーとしての存在であるなど、両者にメリットをもたらすものです。

また、SIerは技術的な専門知識とビジネス知見の両方を持ち合わせているため、技術的な可能性とビジネス上の課題をバランスよく考慮したソリューションを提案することが役割として期待されています。

近年機運が高まっているDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を行う上で、SIerの存在はパートナーとして必要不可欠なものであるといえるでしょう。

SIerの種類と特徴

SIerは資本関係や企業の形態などにより様々な種類があり、それぞれで得意分野も異なります。

ここでは、「メーカー系」「ユーザー系」「独立系」「外資系」の4つの分類ごとに特徴について解説します。

メーカー系SIer

メーカー系SIerは、PCやサーバー、ネットワーク機器などのハードウェア製品を製造しているIT企業を親会社として持っているSIerです。

多くのメーカー系SIerは大規模なハードウェアメーカーを親会社としており、会社名に親会社の名称が含まれていることが多いです。(例:富士通〇〇、NEC〇〇 など)

メーカー系SIerは、自社製品や関連ハードウェアに関するナレッジを豊富に有しているため、自社製品やハードウェアの特性を活かしたシステム設計が可能であることが強みと言えます。

内部事情的な話としては、親会社の受注プロジェクトの下請けが多いことも特徴として挙げられます。

ユーザー系SIer

ユーザー系SIerは、企業の情報システム部門が子会社や関連会社として独立してできた企業のことを指します。

ユーザー系SIerの親会社で知名度の高い業種としては、通信系や総合商社、金融関係のものが挙げられます。

メーカー系SIerと同様に、会社名に親会社の名称が含まれていることが多いです。(例:NTT〇〇、伊藤忠〇〇 など)

ユーザー系SIerはその成り立ちから、親会社や系列グループからシステム設計や開発、運用や保守に関する案件を受注するケースが多いため、特定の業態(親会社の業種)に特化したナレッジを有している点が特徴と言えるでしょう。

独立系SIer

独立系SIerは、前述の2つのSIerとは異なり、親会社を持たないSIerのことを指します。

独立系SIerの例:大塚商会、オービック など

特定の資本関係を持たないため、取り扱う製品や業種に制約が無く、クライアントの課題に最適な製品やサービスをベンダーを問わず組み合わせて柔軟に対応できる点が特徴と言えます。

外資系SIer

外資系SIerは、海外資本(海外のIT企業が日本法人を設立)のSIerのことを指します。

外資系SIerの例:日本アイ・ビー・エム、日本オラクル など

海外の技術を日本企業へ導入する、または日本企業の海外進出を支援するために必要なソリューションを導入するなど、国内のSIerと比較するとグローバルな事業展開に強みを持っていることが特徴と言えます。

SIerを選ぶ際のポイントと注意点

ここからは、自社に合ったSIerの見極めや、発注の際に重要となるポイントや注意点について解説します。

目的の明確化

大前提として、自分たちがやりたいことが何なのか、SIerにシステム導入を依頼することで自組織がどうなりたいのか、どうありたいかを明確にすることが最重要です。

発注者側の目的があいまいなままSIerに発注すると、システム導入そのものが目的となってしまう、完成系のイメージが不明瞭なため要件が二転三転し手戻りが発生するなど、様々なリスクを抱えることになりプロジェクトがとん挫する危険性が高まってしまいます。

システム導入は金銭面や労力面において非常に大きなコストが必要であるため、投資対効果を最大化するためにも、発注前に目的を明確化するようにしましょう。

発注者側の主体性

前述の目的の明確化とも関連しますが、発注者として主体性を持つことも非常に重要なポイントです。

主体性が無いと、SIerの提案内容を精査せずそのまま鵜呑みにしてしまったり、認識のずれにより発注者にとって真に必要でない機能要件を持ったシステムとなってしまうなどのリスクが生じます。

システム導入を円滑に進めるためには、プロジェクトの推進に関してSIerに丸投げせず、自分事として積極的に関与することが大切です。

業種・業務に対する知見と実績

先ほど解説したとおり、SIerは種類に応じて得意分野が異なります。

そのため、プロジェクトの特性や自社の業種により、どのSIerが最適な発注先なのかを見極める必要があります。

自社に合っているか見極めるポイントとして、自社の業種や業務に関する知見を有しているか、自社が導入しようとしているシステムの類似事案の導入実績はどうかなど、SIerの知見と実績を確認することも重要です。

技術力と対応可能な範囲

SIerの選定において、技術力と対応可能な範囲は重要な評価ポイントです。

SIerの技術力を評価する際には、取り扱う技術の広さと専門性の深さの両面を確認することが重要です。

技術の幅が広いSIerは、多様な選択肢の中から最適な技術を選定できる柔軟性がありますが、各技術の専門性が浅い可能性があります。

一方、特定技術に特化したSIerは、その領域での深い知見と高品質な実装が期待できますが、技術選択の幅が限られる場合があります。

また、資本関係の影響でSIerにより取り扱うことのできる製品が限定される場合がありますので、知らず知らずのうちに選択肢を狭めてしまわないよう、商流等の背景も考慮して選定するようにしましょう。

見積の透明性と価格設定

SIerの選定において、見積の透明性と適切な価格設定は非常に重要な評価ポイントです。

システム導入は多くの場合、金銭的に高額なコストとなるため、コストの妥当性と透明性を確保することがプロジェクトの健全な運営につながります。

妥当性や透明性を確かめるための観点の一例としては、見積の内訳が明確かつ詳細になっているかを確認することです。

例えば、総額だけ記載されている見積(要件定義一式:〇〇円 など)は具体的にどんな作業をして、何人がその工程に関わっているのかが不明瞭なので良い見積とは言えません。

こういった場合は、「一式」ではなく、作業単位ごとに詳細な提示を求める必要があります。

あってほしくないことではありますが、見積の詳細化を依頼した際に、詳細な提示ができないまたはいつまでも提示されないなどの状況になった場合は、残念ながらそのSIerは提案姿勢において信頼性に欠けると言わざるを得ません。

逆に、機能ごとにカスタマイズ有無の選択肢や、コスト削減のための代替案などを積極的に提示してくれる場合は、コスト意識があり提案姿勢の面で信頼性がおけるSIerと言えます

自社に合ったSIerがわからないときは

システム導入の検討の際、発注者側の知見不足に起因して「どのSIerを選べばよいのか判断できない」と悩んでしまうケースは非常に多いです。

そんな時は、システム導入に関して専門的知見を持った外部人材のリソースを活用することも解決策の一つです。

IT調達ナビの運営企業であるGPTechは、官民問わず豊富なシステム導入支援の実績を有しており、業種問わずシステム導入のサポートが可能です。

また、当社は中立的な立場から発注者支援を行い、発注者側にとって真に必要なものは何か、発注者側の価値追及を徹底することを行動理念としています。

システム導入は多額の費用が掛かるだけでなく、組織において重要なプロジェクトとなることから、担当される方のプレッシャーも相当なものがあると思います。

自分だけで抱え込まず、少しでもプロジェクトを前に進めるため、私たちと一緒に自社にとってのシステム導入の最適解を考えませんか?

参考リンク:当社のIT調達支援サービスについて

まとめ

SIerのサービス内容や種類、選び方のポイントなどについて解説しましたが、SIerに対する理解は深まりましたでしょうか。

また、当社では官民問わずIT調達支援等、様々なサービス提供を行っております。

「システム調達やベンダー選定を行わなければならないが、リソースも知見も不足している・・・」

「自社に合ったベンダーを選ぶための基準を作るのが難しい・・・」

このようなお悩みについても当社のサービスを活用することで解決できますので、お困りの方はぜひお気軽にお問い合わせください!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

この記事の編集者

錦戸 優輝

錦戸 優輝

約10年自治体の情報システム部門の職員としての経験があり、三層分離やマイナンバー制度開始時の対応など様々な業務に携わってきた。自治体退職後は民間企業のSIerでクラウドサービスを運用するSEとして勤務し、その後IT調達ナビの運営会社である(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに中途入社。ITコンサルティング業務に従事しつつ、IT調達ナビでシステム発注に役立つ記事を展開するメディア運営業務にも携わる。

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