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脱属人化とは?属人化がもたらすリスクや脱属人化を実現する方法、成功事例について紹介!

1. 脱属人化とは?重要なメリットについて

脱属人化とは、特定の個人に依存しない組織体制を構築することを指します。この取り組みは、組織に多様かつ重要なメリットをもたらします。

まず、業務の継続性と組織の柔軟性が向上します。特定の個人が不在であっても業務が滞りなく進行し、人員の異動や組織変更にも迅速に対応できるようになります。これにより、環境の変化に強い組織体制が築かれ、事業継続性が高まります。

また、知識とスキルの共有が促進されることで、組織全体の能力向上につながります。社内の専門知識やノウハウが蓄積され、社員全体のスキルアップが期待できます。これは人材育成の加速につながり、組織の競争力強化に寄与します。

さらに、標準化された業務プロセスにより生産性が向上します。これは効率的な業務遂行を可能にするだけでなく、多様な働き方の実現にもつながります。時間や場所に縛られない柔軟な業務体制が構築でき、ワークライフバランスの改善にも貢献します。

リスク管理の面でも、脱属人化は大きな効果を発揮します。特定個人への依存度が低下することでリスクが分散され、キーパーソンの急な離職や長期不在といった事態にも、組織は柔軟に対応できるようになります。

加えて、業務プロセスの透明性が高まることで、コンプライアンスが強化されます。これにより、一貫した品質の担保が可能になり、顧客満足度の向上にもつながります。

最後に、これらのメリットが相互に作用することで、イノベーションの創出も期待できます。多様な知識と経験を持つ社員が協働することで、新たなアイデアや解決策が生まれやすくなり、組織の創造性が高まります。

このように、脱属人化の取り組みは、組織の基盤強化から具体的な業績向上まで、幅広い効果をもたらします。結果として、組織全体の生産性向上と持続的な成長が実現され、急速に変化するビジネス環境において競争優位性を獲得することができるのです。

2. 属人化がもたらす主要なリスク

2.1 事業や業務継続性のリスク

特定の従業員への過度の依存は、組織にとって大きなリスクとなります。重要な業務や情報が特定の社員に集中している状況では、その社員の不在時に業務が停滞または停止する可能性があります。また、退職時の業務引継ぎが困難になり、組織の継続性が脅かされます。さらに、特定社員のワークライフバランスが崩れるリスクもあります。例えば、営業部門で大口顧客との取引を一人の営業担当者しか全容を把握していない状況は、このリスクの典型例と言えるでしょう。

2.2 人材育成停滞のリスク

経験やノウハウが特定の個人に集中し、共有されない状況は、組織の成長を阻害する重大なリスクとなります。この問題は、技術伝承の困難さ、新人教育の長期化、そして組織全体のスキルレベル低下を引き起こします。例えば、ベテラン社員が複雑な業務を独占し、若手が単純作業に終始する状況や、重要なトラブル対応知識が文書化されずにベテランの記憶だけに頼っている状況などが該当します。

2.3 業務の非効率性のリスク

業務手順や意思決定プロセスが文書化されていない状況は、組織の透明性と効率性を大きく損ないます。このような状態では、監査や改善が困難になり、不正や非効率な業務が継続する可能性が高まります。また、業務の質にばらつきが生じ、一貫性のあるサービスや製品の提供が難しくなります。例えば、経理部門で月次決算の作業手順が担当者によって独自に編み出された方法で、非効率且つ不自然なやり方をしているにも関わらず気づけない状況は、このリスクの具体例です。

2.4 コンプライアンス違反のリスク

属人化は、コンプライアンス違反のリスクを高めます。誰かに業務が依存し明確な手順やチェック体制がない状態では、意図せず法令や規制に違反してしまう可能性が増大します

具体的には、以下のようなリスクが考えられます:

・法令違反:業務プロセスが明確でないため、法令順守のためのチェックポイントが不明確になり、意図せず法令に違反してしまうリスクがあります。

・不正行為の温床:プロセスが不透明であることで、不正行為を隠蔽しやすい環境が生まれ、組織の信頼性を大きく損なうリスクがあります。

・説明責任の欠如:意思決定プロセスが不明確なため、問題発生時に適切な説明や対応ができず、ステークホルダーの信頼を失うリスクがあります。

・データ管理の不備:明確なプロセスがないことで、個人情報や機密情報の適切な管理が難しくなり、情報漏洩のリスクが高まります。

例えば、経理部門で月次決算の作業手順が特定の担当者の頭の中にしかない状況で、明確なチェック体制がない場合、不適切な会計処理や粉飾決算などの不正が見逃される可能性も高まります。

2.5  チーム間のコミュニケーション阻害のリスク

特定の個人を介さないと情報が伝わらない状況は、組織の連携と効率を著しく低下させます。このような状態では、組織のサイロ化(他部門と情報共有や連携がなされないこと)が進み、部門間の連携や情報共有が阻害されます。重要な情報の伝達が遅れたり、抜け落ちたりする可能性が高くなり、組織全体の意思決定スピードも低下します。例えば、プロジェクトマネージャーが全ての情報を集約し、チーム間の橋渡し役を一人で担っている状況は、このリスクの典型例と言えるでしょう。

3. 脱属人化推進における課題と対策

脱属人化の推進には様々な課題が伴いますが、適切な対策を講じることで克服が可能です。主な課題としては、従業員の抵抗初期の生産性低下、そして投資コストの問題が挙げられます。

従業員の抵抗は、現状維持志向や変化への不安、自身の専門性や存在価値の低下への懸念から生じます。これに対しては、丁寧な説明とコミュニケーションが重要です。脱属人化の目的と個人・組織へのメリットを経営層自ら丁寧に説明し、定期的な進捗報告会や意見交換会を実施することで、従業員の理解と協力を得ることができます。また、成功事例の共有によってポジティブな雰囲気を醸成することも効果的です。

初期の生産性低下は、新しいプロセスやシステムへの適応に時間がかかることや、ドキュメント作成やナレッジ共有に時間を要することから発生します。この課題に対しては、段階的な導入と継続的な改善が有効です。パイロット部門での試験導入と効果検証を行い、PDCAサイクルを回して問題点を迅速に改善していくことで、スムーズな移行が可能になります。小さな成功を積み重ねることで、組織全体の自信を醸成することもできます。

投資コストの問題は、システム導入や教育にかかる費用、既存業務と並行して推進するための人的リソース確保などから生じます。これに対しては、ROIの明確化と経営層のコミットメントが重要です。定量的・定性的な効果を可視化し、投資対効果を明確にすることで、経営層の理解と支援を得ることができます。また、経営層による強力なサポートと長期的視点での評価、そして脱属人化推進の専門チーム設置による集中的な取り組みが、効果的な対策となります。

上記の課題を解消するためには、経営者との密接な意思疎通と、経営者からの明確なメッセージ発信が不可欠です。脱属人化の取り組みが経営戦略と整合性を持っていることを確認し、経営者自身が変革の必要性と意義を組織全体に向けて発信することで、従業員の理解と協力を得やすくなります。定期的に経営者から進捗状況や成果、今後の展望についてメッセージを発信してもらうことで、組織全体の取り組み意欲を高め、脱属人化を実現することができるでしょう。

4. 脱属人化を実現するための前提及び5つの方法

脱属人化を推進する上でどの方法にも前提となるのが、重要な関係者を選別しチームを組成することです。各部門のキーパーソンや影響力のある従業員を特定し、彼らの協力を得ることで、組織全体への浸透がスムーズになります。また、各関係者の利害関係を調整し、Win-Winの関係を構築することも重要です。

4.1 業務プロセスの可視化と標準化

業務プロセスの可視化と標準化は、脱属人化の基盤となる重要な取り組みです。業務フローを作成することで、現状の業務を可視化し、非効率な部分や属人化リスクを特定することができます。これにより、標準的なプロセスを設計し、全員が同じ手順で業務を遂行できるようになります。

また、作業手順書の作成も重要です。各業務の詳細な手順を文書化し、定期的な見直しと更新のルールを設定することで、常に最適な状態を維持できます。

実践にあたっては、現場の声を積極的に取り入れ、実態に即したプロセス設計を心がけることが重要です。可視化したプロセスを全社で共有し、常に最新の状態を保つことも忘れてはいけません。さらに、定期的なプロセス改善活動を実施し、継続的な最適化を図ることで、より効果的な脱属人化を実現できます。

4.2 マニュアル・ドキュメントの整備

マニュアルやドキュメントの整備は、暗黙知を形式知化し、誰もが必要な情報にアクセスできる環境を作るために不可欠です。詳細な業務マニュアルの作成では、単なる手順書にとどまらないことです。仮に、既存システムや新規導入予定のシステムのマニュアルを作成する場合は、システムの業務マニュアルだけでなく、システムで取り扱うデータ、及び運用状況を把握するための整理も必要となります。また、動画や図解を活用し、わかりやすさを重視することで、社員の理解を促進します。

ナレッジベースの構築も効果的です。FAQや過去の対応事例をデータベース化し、検索機能を充実させることで、必要な情報に素早くアクセスできるようになります。これにより、経験の浅い社員でも適切な対応ができるようになり、業務の質の向上と効率化が期待できます。

マニュアル作成を一度きりの作業ではなく、継続的なプロセスとして位置づけることが重要です。社員からのフィードバックを積極的に集め、常に改善を行うことで、より実用的で効果的なマニュアル・ドキュメントを維持できます。また、マニュアルの使用状況をモニタリングし、実際に活用されているか確認することも忘れてはいけません。

4.3 ナレッジ共有システムの構築

ナレッジ共有システムの構築は、組織全体の知識レベルを向上させ、イノベーションを促進する上で重要な役割を果たします。社内Wikiやイントラネットの活用は、その有効な手段の一つです。誰でも閲覧・編集できるプラットフォームを構築することで、知識の民主化と迅速な情報更新が可能になります。バージョン管理機能を活用し、情報の更新履歴を管理することで、知識の進化の過程も追跡できます。

定期的なナレッジシェアセッションの実施も効果的です。部門横断的な勉強会や事例共有会を開催することで、直接的な知識交換の機会を創出します。これらのセッションをオンラインで配信し、アーカイブ化することで、時間や場所の制約を解消し、より多くの社員が知識にアクセスできるようになります。

ナレッジ共有システムの実践にあたっては、情報共有の文化を醸成することが重要です。そのためには、経営層が率先して活用する姿勢を見せることが効果的です。情報セキュリティに配慮しつつ、必要以上に共有を制限しないバランスの取れた運用が求められます。

4.4 教育・トレーニング体制の確立

教育・トレーニング体制の確立は、組織全体のスキルレベルを向上させ、柔軟な人材配置を可能にする上で重要です。計画的なクロストレーニングの実施は、その中核となる取り組みです。定期的なジョブローテーションを実施することで、社員が多様な業務スキルを習得できます。また、他部署の業務を体験する短期交換研修制度の導入も効果的です。これにより、部門間の相互理解が深まり、組織全体の連携が強化されます。

4.5 ITツール・システムの活用

ITツール・システムの活用は、脱属人化を効果的に推進し、業務の効率化と透明性向上を実現する上で不可欠です。タスク管理ツールの導入は、その重要な一歩となります。プロジェクト管理ソフトウェアを活用することで、業務の進捗や担当者を可視化し、チーム全体で状況を共有できます。自動リマインド機能を活用することで、期限管理も効率化され、業務の遅延リスクを低減できます。

コミュニケーションプラットフォームの整備も重要です。ビジネスチャットツールの導入により、リアルタイムな情報共有が促進され、特定の個人を介さない直接的なコミュニケーションが可能になります。また、ビデオ会議システムの活用で、遠隔地とのコミュニケーションを円滑化し、地理的な制約を克服できます。

ITツール・システムの導入にあたっては、使いやすさと既存システムとの連携性を重視することが大切です。また、導入初期に十分なトレーニングを行い、全社的な活用を促進することも成功の鍵となります。定期的な利用状況の分析を行い、必要に応じて改善や追加機能の導入を検討することで、より効果的なIT活用が実現できます。

5. 脱属人化成功事例:某電気機器メーカーのケーススタディ

某電気機器メーカーでは、販売管理、仕入管理、在庫管理、経費精算業務においてExcelを活用した方法が属人化しており、内容を社内で共有することが困難な状況に陥っていました。この状況の特徴的な点は以下の通りでした:

  • 担当者が独自のExcelシートを作成し、独自の方法で業務を遂行していた。
  • これらの業務は決して複雑ではなく、世の中でその種の業務経験がある人は多いにいたが、担当者の「独自のやり方」が確立されており、他社員や新任者が理解し引き継ぐことが困難だった。
  • 担当者自身も、自分のやり方が標準的でないことに気づいていなかった。

この状況を改善するため、第三者のコンサルタントが参加し、以下のアプローチを採用しました:

 

  1. 現状(AsIs)の詳細な分析:各担当者の業務プロセスを丁寧に観察し、どのような独自のやり方が確立されているかを明確化。
  2. あるべき姿(ToBe)の提示:業界標準的な業務プロセスを提示し、現状との乖離を明確化にし、第三者として、標準的な方法を提言し、担当者に気づきを与えた。
  3. 標準的な業務プロセスの設計:誰もが理解し実行できる、シンプルかつ標準的な業務プロセスを設計。
  4. 新システムの導入提案:設計した標準的プロセスを実現するための新システムを提案。
  5. 導入支援:当社の知見を活用し、新システムの初期設定や運用方法の指導を実施。

この取り組みの結果、以下の成果が得られました:

Excel業務からの脱却:属人化したExcel管理から、標準化されたシステムへの移行を実現。
業務の透明性向上:誰もが理解できる標準的なプロセスにより、業務の透明性が大幅に向上。
引継ぎの容易化:標準化されたプロセスにより、新任者への引継ぎが容易になった。
業務効率の向上:標準的なプロセスとシステムの導入により、全体的な業務効率が向上。
気づきの機会創出:担当者自身が自分のやり方の特殊性に気づき、改善の必要性を理解。

この事例から学べる重要な点は、属人化した業務プロセスの改善には、外部からの客観的な視点が極めて重要だということです。当事者は自身のやり方の特殊性に気づきにくいため、第三者が「標準的なやり方」を提示することで、改善の糸口を見出すことができます。また、必ずしも高度な専門知識が必要なわけではなく、むしろ一般的で標準的なプロセスに戻すことが、脱属人化の重要なステップとなる場合もあります。

6. まとめ

脱属人化は、現代の企業が直面する多くの課題に対する有効な解決策となります。本記事で見てきたように、脱属人化は業務効率の向上、リスク管理の強化、人材育成の促進、そしてイノベーションの創出など、多岐にわたる効果をもたらします。しかし、その実現には慎重かつ戦略的なアプローチが必要です。

是非この機会に、脱属人化に向け具体的な検討を開始してみてはいかがでしょうか。

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この記事の編集者

柳元 華奈

柳元 華奈

北京大学日中通訳専門修士卒。日本経済の活性化を目指し、日本のIT変革やアジアとの架け橋となるべく、(株)グローバル・パートナーズ・テクノロジーに新卒入社。 主に民間企業のシステム刷新プロジェクトに従事し、同社のPR・マーケティング全般の業務やIT調達ナビの運営業務にも携わる。

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